NECは4月3日、経済産業省が公表する「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」に基づき、コーポレートガバナンス体制とAIガバナンスに関する全社規定を新たに整備したと発表した。新たなAIガバナンスは同日に運用を開始し、順次グループ各社へ適用を拡大していくという。
同社では、「人権尊重を最優先にしたAI提供と利用や活用(AIと人権)」をESG(環境・社会・企業統治)視点の経営優先テーマの1つとして位置付け、取り組んでいる。これまで、パーソナルデータの活用に向けた戦略策定や政策提言を行う「データ流通戦略室」や、社内制度の整備や従業員への研修など、人権を尊重した事業活動を推進する「デジタルトラスト推進本部」などを設立。また、2019年には「NECグループ AIと人権に関するポリシー」を策定するとともに、外部有識者から構成される「デジタルトラスト諮問会議」を継続して実施している。
今回、同社はAIガバナンスの取り組みを強化するため、生体認証を含むAI事業で蓄積した知識を生かし、経産省が公表するガイドラインの“アジャイルガバナンス”の枠組みに対応したガバナンス体制と全社規定を新たに設計した。
アジャイルガバナンスは、AIシステムのように常に変化する環境とゴールを踏まえ、最適な解決策を見直し続けるガバナンスモデルの枠組みだという。具体的には、外部環境とリスクを分析する「環境・リスク分析」、システムデザインの羅針盤として自社のガバナンスのゴールを定める「ゴール設定」、ゴールからの乖離(かいり)の評価と乖離への対応やリテラシーの向上、AIマネジメントの強化、利用者の負担軽減を行う「システムデザイン」、ゴールとシステムを継続的に評価・再分析を行うために説明可能な状態を担保する「運用」、システムデザインや運用の妥当性を見極める「評価」、社会の変化に対応するための「環境・リスクの再分析」――の6項目と2つのループで構成される。
経産省が公表するAI原則実践のためのガバナンスガイドラインへの対応
このアジャイルガバナンスを同社のAIガバナンスに活用することで、AIと人権に関する社会的なリスクの変化や社内でルール化したリスクの対応の方法などを踏まえ、継続してAIガバナンスのルールを柔軟に改善・更新できるとしている。
また、コーポレートガバナンス体制では新たにAIガバナンス遂行責任者を定義。取締役会やリスクコンプライアンス委員会、外部有識者会議などの関係を明確にした上で、コーポレートガバナンスとして位置付けた。今後、遂行責任を担うAIガバナンス推進責任者となる最高デジタル責任者(CDO)の下でAIガバナンスを推進し、社内外の各部門や機能と連携することでより一層、ガバナンスの強化を図るという。
新たなAIガバナンス体制