ServiceNow Japanは4月11日、同社が提供する「Now Platform」の最新版「Utah」のリリースを発表した。同バージョンでは、AIを活用したプロセスマイニング、追加検索機能、サービスの新機能拡張が含まれ、自動化の促進や体験の簡素化、組織の俊敏性の向上を支援する。
同日に行われた記者説明会には執行役員 ソリューションコンサルティング事業統括部 事業統括本部長の原智宏氏が登壇。同氏は、Utahリリースの背景について、企業や組織のリーダーを取り巻く環境とともに説明した。
原智宏氏
現在、企業はマクロ的な環境の変化に伴うサプライチェーンの分断や急速に進むインフレーション、それに伴うさまざまな物価高、企業に広がる景気後退など、外側からの重圧に直面している。一方、コロナ禍で加速したデジタル投資により、無秩序なデジタル技術の導入によるデータのサイロ化や、さまざまなシステムの乱立など、いわゆる“デジタルスプロール”が起きているという。
また、デジタル活用を支えるIT部門でも課題があり、Now Platformのようにアジャイルな形でリリースするアプリケーションに対して、運用を支えるプロセスや人材、スピード感を持った取り組みをできる企業は多くない。さらに、セキュリティやコンプライアンス、さまざまな規制への対応など、ビジネスの継続性に対するリスクといった企業の内側からの重圧にも直面している。同氏は、「このように、企業の外側や内側にある環境が組織にとって重圧になり、DXのスピードを鈍化するとともに、企業のリーダーは難しい選択を迫られてしまっている」と話す。
その選択は、例えば「顧客体験の向上」を選ぶか、「サービスコストの削減」を選ぶかなど、どちらが正しいとは言えない選択であり、同社は「企業のリーダーが難しい選択を迫られないように、この2つをバランス良く両立したい」という考えからUtahリリースに至った。また同氏は、激変する環境下で企業に求められる、組織を横断して迅速な変革をけん引するインテリジェントプラットフォームとしてUtahを提供すると説明した。
古谷隆一氏
今回提供するUtahのコンセプトは「シンプルなエクスペリエンス」「目的に応じた自動化」「組織全体のアジリティー(俊敏性)」――の3つだ。同じく説明会に登壇した、マーケティング本部 プロダクトマーケティング部 部長の古谷隆一氏が同バージョンの新機能ハイライトを紹介した。
Utahリリースコンセプト
シンプルなエクスペリエンスでは、生産性と満足度を高めるシンプルで統一された体験を提供する。今回、新たに追加された機能は、ブランドテーマを作成・管理する「Theme Builder」。これは、直感的なガイドにより、ブランド別のテーマを自動生成する機能。デスクトップと同様のテーマがモバイルに適用されるため、ユーザーは常に一貫した体験ができる。
Theme Builderの画面イメージ
施設管理者のさまざまなリース契約の管理を支援する「Workplace Lease Administration」では、一元化されたワークスペースで効果的に契約内容が確認でき、コスト管理をしながら、情報に基づいた意思決定でオフィススペースの運営ができる。また、契約の一部として、スペース、ワークプレイス資産、サービスを関連コストとともに追跡する。
目的に応じた自動化では、サービスチームの品質と効率の継続的な改善を支援するため「Process Optimization」をプラットフォーム全体に拡張。ITサービス管理(ITSM)だけでなく、フィールドサービス管理(FSM)など、同プラットフォーム内の他の機能のワークフローをサポートする。エンドツーエンドプロセスの可視性を高め、AIや機械学習の分析により隠れた遅延やボトルネックをピンポイントで特定。プロセスの非効率性の根本的な原因を割り出し、是正措置を行うことでコスト削減につなげるとしている。
Process Optimizationの画面イメージ
また、人事管理などのワークフローをサポートするための強化も行った。「Workforce Optimization」では、従業員のスキルやトレーニング状況、スケジュールを一元管理できる。これにより、管理者やリーダーは従業員の理解を深め、ワークロードのバランスを改善することで生産性向上につなげられるとしている。また、AIを活用したスキルや学習コンテンツの推奨による学習機会の創出や、過去のワークロードに基づく需要予測で高いパフォーマンスを発揮するチームの構築を支援する。
組織全体のアジリティーでは、企業が脅威環境に対処できるように、より迅速なイノベーションと俊敏な運用、増大する運用リスクとサイバーリスクの管理を可能にするという。
具体的には、「Health and Safety Incident Management」を新しいソリューションとして追加。ここでは、従業員によるインシデントの報告や解決の入力ができる。さらに、安全管理チームに対して傷病記録による調査や根本原因分析の実施、インシデントに対する是正措置や予防措置を講じる権限の付与を可能にする。授業員の健康と職場の安全をサポートすることで、健全で生産性の高いカルチャーの醸成につなげられるとしている。
Health and Safety Incident Managementの画面イメージ
また、「Now Platform San Diego」から導入された次世代のユーザーインターフェース「Next Experience」に対応するため、「Security Incident Response Workspace」を新たに追加。これは、セキュリティアナリストやセキュリティオペレーションセンター(SOC)の管理者向けに提供されるもので、1つのワークスペース内でセキュリティインシデントの初期分析から封じ込め、根絶、復旧までのライフサイクルを一元管理する。これにより、リアルタイムで何が起きているかを瞬時に理解し、迅速な対応につなげられるとしている。さらに、「Process Automation Designer」を活用することで、ノーコードのプレイブックで複数のワークフロー管理も可能だという。