ブリガムヤング大学(BYU)電気・計算機工学部で行われている研究が、アメリカンフットボールの試合映像分析のあり方を一変させようとしている。
D.J. Lee教授と研究員(BYUフットボールスタジアムの前で撮影)
提供:Nate Edwards/BYU Photo
試合映像の分析は、試合に勝利するための戦略の根幹を成しているため、この変化は極めて重大な意味を持っている。このイノベーションは、同大学の電気・計算機工学部でロボティックビジョン研究室のディレクターを務めている、D.J. Lee教授の研究成果から生まれた。同氏が研究員のJacob Newman氏、Andrew Sumsion氏、Shad Torrie氏らと協力して行っている研究は、アメフトチームのコーチに、人間にはできない分析ができる夢のようなアシスタントを提供できるかもしれない。
この画期的なソリューションには、機械学習、ニューラルネットワーク、コンピュータービジョンが使われており、映像に映っている自チームと相手チームの選手にタグを付け、動きを追跡し、人間なら数百時間かかる面倒な作業を行う時間を省くことができる。このようなことをするのは、相手チームのフォーメーションを正確に識別して、カウンター戦略で迎え撃つためだ。
ご存じの人もいるだろうが、アメフトは戦略が勝敗に及ぼす影響が極めて大きいスポーツだ。戦略があまりにも重要であるため、米国のプロアメフトリーグであるNFLは、相手チームの戦略を探るための方法が冷戦時代のスパイ小説のようになってしまわないよう、ルールを定めているほどだ。NFLの「試合運営マニュアル」には、「試合中のコーチブース、フィールド、ロッカールームでは、いかなる録画機材も使用してはならない」と定められている。
もちろん、機材が使えなくてもできることはある。相手チームの優位に立つためには、情報収集が極めて重要であるため、スタンドに座った偵察要員は相手チームのコーチやスタッフ陣に双眼鏡を向け、相手の戦術に関する情報を得ようと必死に手の動きやジェスチャーを観察している。しかし、このような方法が有効であることを示す信頼できる証拠はない。フェイクのサインが頻繁に使われていることもあり、映像がなければ正しい情報を得ることが難しいためだ。
こうした背景から、試合映像の分析が最後に残された手段になっている。
アメフトの試合は、プレーの流れが頻繁に中断し、さまざまなフォーメーションを駆使してフィールドを少しずつ前進していくことが多いため、サッカーのような流動的で自由に試合が動いていくスポーツとは根本的に異なっている。しかし、アメフトの試合では戦略が果たす役割が大きいため、分析に非常に適している。
果てしなく続く準備
アメフトのコーチや選手には、ディフェンス側かオフェンス側かを問わず、プレーごとにさまざまな戦略を組織的に実行したり、プレーごとに戦術を編み出したりする機会が無数にある。
その際、下準備が万全で、映像から有益な情報が得られていれば、それを使って相手を出し抜くことができる。