「ChatGPT」利用のヒント

「ChatGPT」で作成したコードの所有権は誰に--法的保護をめぐる複雑な問題

David Gewirtz (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2023-06-23 07:30

 ChatGPTを使った既存のコードの書き直しや改善の方法を紹介した記事を先ごろ執筆した。その記事へのコメントで、@pbug5612から興味深い質問があった。

 生成されたコードは誰が所有するのか。コードに企業秘密が含まれている場合はどうなるのか。そのすべてをGoogleやMicrosoftなどに共有したということなのか。

 これは良い質問であり、簡単には答えられない質問でもある。筆者はこの2週間、弁護士や専門家に問い合わせて、決定的な答えを得ようとしてきた。

 今回の記事で説明すべきことは多いが、まずはこの議論の全体的なテーマを紹介するのがいいだろう。法律事務所Schmidt & Clarkの弁護士であるCollen Clark氏は次のように述べている。

 結局のところ、より明確な判例が確立されるまで、AIが生成したコードを使用することの法的な意味は、複雑で不確実な状態が続く。

 とはいえ、意見を表明している人が少ないというわけではない。今回の記事では、ChatGPTを使用してコードを記述することの意味を著作権の観点から考える。次回の記事では、AIが生成したコードに関連する法的責任の問題について解説する。

誰がコードを所有するのか

 考えられるシナリオはこうだ。アプリケーションの開発に取り組んでいるとしよう。そのアプリケーションの大部分は、自分で直接作成した。UIを定義して、ビジネスロジックを作成し、コードの大部分を記述した。しかし、数個のモジュールはChatGPTを使用して記述し、生成されたコードをアプリにリンクさせた。

 ChatGPTが書いたコードの所有権は、誰にあるのだろうか。そのコードを含めたことで、アプリケーション全体に対する所有権の主張が無効になるのだろうか。

 弁護士のRichard Santalesa氏は、コネチカット州ウェストポートに拠点を置くSmartEdgeLaw Groupの創設メンバーであり、技術取引、データセキュリティ、知的財産の案件を主に扱っている。Santalesa氏は、著作権法だけでなく契約法に関する問題もあり、それらは扱いが異なると指摘する。

 契約の観点から見ると、AI生成コードを作成する大半の企業は、「自社の他のすべてのIPと同様に、提供されるすべての素材を自社の財産とみなすだろう。これにはAI生成コードも含まれる」とSantalesa氏は主張する。

 OpenAI(ChatGPTの開発元)は、生成されたコンテンツの所有権を主張していない。同社のサービス利用規約にはこう書かれている。「OpenAIは、出力に関するすべての権利、権原、利益をユーザーに譲渡する」

 だが、作成中のアプリケーションにAIが書いたコードを使うつもりなら、もちろん、誰が何を所有しているか(または所有していると主張しているのか)を入念に調べる必要があるだろう。

 米ZDNETは、米国外でのコードの所有権に関して、カナダのビジネス法律事務所McMillan LLPのテクノロジーグループのパートナーで、バンクーバーを拠点とするRobert Piasentin氏に話を聞いた。Piasentin氏によると、AIが生成した作品に関して、所有権は依然として「法律の未解決分野」であるという。

 とはいえ、この問題を明確にしようとした取り組みはあった。2021年に、カナダの イノベーション・科学経済開発省(ISED)が、この問題に対する3つのアプローチを提案している。

  1. 所有権は、作品の作成の手配を行った人間に帰属する。
  2. 所有権と著作権は、人間が作成した作品にのみ適用される。したがって、生成されたコードは著作権保護の対象にならない。
  3. AIが生成した作品に関して、新たに「著作者なし」の一連の権利を作り出す必要がある。

 イングランドとウェールズでも弁護士資格を持つPiasentin氏は、次のように語る。「カナダと同じく英国にも、AIシステムの設計、開発、使用を直接規制する法律はない。だが、英国は、誰がコンピューター生成作品の作者になれるかを世界で初めて明確に定義した国の1つだ」

 「英国の著作権意匠特許法の下では、コンピューター生成作品の作者は、作品の作成に必要な手配を行った人間であり、その作品の著作権の最初の所有者であるとされる」(Piasentin氏)

 英国ではすでに、AIではなくビデオゲームの訴訟に基づいた判例がいくつかあるようだ、とPiasentin氏は語る。高等法院(米国の最高裁判所とほぼ同等)での訴訟において、ビデオゲーム内で生成された画像は、プレーヤーがゲームを操作して画面上のゲームアセットを独自に整えて作成したとしても、プレーヤーではなくゲーム開発元の所有物であるとの判決が下された。

 プレーヤーが「それらの画像の作成に必要な手配を行った」わけではないため、開発元に有利な判決が下った。

 Piasentin氏は、AIが生成したコードの所有権も次のような点で同様に判断されるかもしれない、と指摘する。「AI生成作品に必要な手配を行った人間、すなわち生成AIの開発元が、作品の作者とみなされる可能性がある」。これは必ずしも、プロンプトを作成したユーザーが作者とみなされる可能性を排除するものではない。

 また、訓練データを提供した不特定の作成者(特定できない可能性がある)がAI生成コードの作成者とみなされる可能性も排除されていない点に注目したい。

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