人工知能(AI)やその関連技術に対する需要は高く、ビジネスリーダーたちは、躍起になってそれらの技術を試し、自社の可視性、分析、予測の改善にどうすれば役立てられるかを検討している。生成AIは大衆化され、今や誰もが簡単にアクセスできるようになった。しかし、アプリケーション組み込み型のAI、つまりシステムに組み込まれ、ビジネスにすぐにも具体的な価値をもたらすと考えられているタイプのAIは、生成AIほどは身近ではなく、ビジネス側の人々にとってはその技術を把握することも難しい。
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元Meta/FacebookのリサーチデータサイエンティストであるRachel Woods氏による最近のX(旧Twitter)への投稿は、まさにそういう論調で書かれている。同氏は、AIを使ったしっかりとしたビジネスケースが形成されつつある一方で、使い勝手はまだまだだと指摘している。
「AIにはまだ、使い勝手に大きな問題がある」とWoods氏は述べている。「ほとんどの人はまだ、『ChatGPT』や大規模言語モデル、生成AIなどのツールをどう使うかで格闘している段階だ。誰もが、今まで知られていなかったキラーユースケースを誰かが教えてくれるのを待っている。まだ、多くの人が実用性に疑問を抱いている。読者の興味を引くだけの中身のない記事は多いが、多くの場合、根本的な問題を具体的に指摘しているわけではない。実のところ、これらのツールは『役に立たない』わけではない。ただ、使い勝手に大きな問題があるというだけだ」
他の専門家も、少なくとも大筋では同様の意見を持っている。Constellation ResearchのプリンシパルアナリストAndy Thurai氏は、「ChatGPTやAI全般が流行した理由は、使いやすく、ビジネスユーザーが非常に簡単な言葉で技術の可能性を探求できるためだ」と指摘している。「特に、生成AIが持つテキストや、コンテンツや、動画や音声を生成する能力は、技術に詳しくないユーザーにAIの可能性を知らしめた」
その一方で、これまでバイアスや、技術的な制約や、責任問題などのさまざまな理由から非技術者によるAIの利用を制限してきた技術者は、圧倒的な反響とあっと言う間の普及に驚愕することになったとThurai氏は述べている。「このことは、AIの作り手に自信を与えると同時に、AIについて詳しく説明する必要性も薄れさせた」と同氏は言う。
とはいえ、Vianaiの創業者で最高経営責任者(CEO)のVishal Sikka博士は、AIを深く理解しているのは「比較的少数の人々」だけだと話す。同氏は、その数は世界中で2万人から3万人くらいだと考えている。世界には約100万人のデータサイエンティストがいるが、「そうした人々の多くは、システムがなぜそのような動作をしているのか、なぜそのようなレコメンデーションをするのか、何がうまくいかない可能性があるのか、基礎となる技術がどのように機能しているのかを説明することができない」とSikka氏は言う。
企業におけるAIのユースケースと生成AIのユースケースには隔たりがあり、ユースケースやアプローチは変える必要がある。「コンテンツを生成するだけでは十分ではない」とThurai氏は指摘した。「企業で利用するAIはビジネス課題を解決する必要がある。責任あるAIでなければならず、倫理的で、説明可能で、監査可能で、オリジナリティーと意思決定の内容に関して法的に正当化できなければならない。これらは単なる使い勝手以上の問題であり、こうした問題が起これば、どのような企業であっても深刻な影響を受ける可能性がある」