プライバシー保護の動きが強まる中、企業は顧客データの取り扱いに注意が必要となっている。デジタル広告の分野では、計測に関わる技術への規制によって広告効果が低下し、広告事業の成長が鈍化している会社が多い。そこで注目されているのが、データクリーンルームという仕組みだ。
データクリーンルームとは、複数の企業間で個人のプライバシーや情報のセキュリティを守りながら、データを参照・分析する仕組みである。例えば、企業が保有する自社の顧客情報や取引情報と、大手プラットフォーマーなどが収集するユーザーの購買意向や興味関心などのデータと組み合わせて、データ分析や広告配信、効果検証に活用できる。
トレジャーデータ 執行役員 最高戦略責任者(CSO)の山森康平氏によると、この分野の先駆者はGoogleであるという。同社は2017年に「Google Ads Data Hub」という広告データ分析プラットフォームをリリースしており、これがデータクリーンルームの始まりだとする。その後、他のプラットフォームやクラウドサービスも同様のソリューションを提供するようになった。
「メーカーやブランドは、顧客の日常生活の一部しか見えていない。データクリーンルームは、自社データだけでは把握できない顧客の全体像を見るために役立つツールだ」と山森氏は語る。
データクリーンルームの概要
トレジャーデータは、ヤフー(現:LINEヤフー)と共同でデータクリーンルームを開発し、「Yahoo! Data Xross」というサービスを2023年4月から提供している。これは、トレジャーデータが提供する顧客データ活用サービス「Treasure Data CDP」で管理される顧客データを、セキュアな環境で取り扱い、ヤフーが保有する購買意向や興味関心などのデータを用いて分析ができるサービスだ。利用企業はクッキー情報ではなく、顧客IDを基に統計的な顧客インサイトや広告効果測定ができる。Yahoo! Data Xrossで分析したデータは統計情報として扱われ、個人を識別することなく閲覧できる。
Yahoo! Data Xrossを使えば、利用企業は自社のTreasure Data CDP環境で、ヤフーが持つデータを分析や検証に活用できる。これによって、より深い顧客分析や顧客理解が可能になる。その結果、メディアプランに依存しないマーケティング戦略を再構築し、持続的かつ効果的な広告の配信や計測、分析ができるという。