Thomas Davenport氏は、10年以上前のHarvard Business Reviewの記事で、データサイエンティストは「21世紀で最もセクシーな職業」だと宣言した。しかし人工知能(AI)の時代となった今では、その称号は「プロンプトエンジニア」に受け継がれようとしているかもしれない。
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確実なのは、プロンプトエンジニアが今もっとも注目を集めている職業の1つだということだ。米ZDNetの寄稿者であるDavid Gerwitz氏は、プロンプトエンジニアリングの仕事は、対話的な手法と「コードに埋め込まれたプロンプトによるプログラミング的手法」の両方で、生成AIから最善かつもっとも適切な回答を得ることだと説明している。
Gerwitz氏によれば、プロのAIプロンプトエンジニアの年俸は下限が17万5000ドル(約2500万円)に達しており、30万ドル(約4300万円)を超えることもあるという。さらに同氏は、「誘導尋問ができるだけでは、優れたAIプロンプトエンジニアにはなれない。このキャリアパスで成功するためには、AIや、プログラミング、言語、問題解決の専門分野の能力を併せ持っていなければならず、ときには芸術にも通じている必要がある」とも付け加えている。
生成AIが世間を騒がせる中、プロンプトエンジニアに対する需要も大きく高まっている。しかし問題は、即戦力になるプロンプトエンジニアを見つけるのが極めて困難だということだろう。プロンプトエンジニアの採用は、気の弱い人には向かない仕事だ。カナダ最大の銀行Royal Bank of Canada(RBC)の資産管理事業部門であるRBC Wealth Managementでテクノロジー責任者を務めるGreg Beltzer氏は、「私は、プロンプトエンジニアを採用している採用担当者のほとんどは、実際には人材を盗んでいると思う」と述べている。
筆者は、最近ニューヨークで開催されたSalesforceのカンファレンスで、Beltzer氏からAI時代のスキルアップに関する課題について話を聞くことができた。同氏は、「今日では、優秀なプロンプトエンジニアの報酬はデータサイエンティストよりも高額だ」と語った。「そもそも経験者を見つけること自体が途方もなく難しい。5年以上の経験がある人はまずおらず、よくてせいぜい2、3年だが、それでも見つけるのは困難だ」
Beltzer氏はさらに、「人々にプロンプトエンジニアリングに関する知識を与えることが急務になっている。しかし、プロンプトエンジニアリングは科学だろうか。それとも技能だろうか。今後もっと多くのツールが作られるようになるだろうか」と続けた。ツールさえ充実してくれば、「システマティックかつプログラム的に」プロンプトを作成して、AIモデルをトレーニングすることも容易になるかもしれないと同氏は言う。