NTTドコモは6月27日、同社の通信サービスの品質向上を目的に量子アニーリング方式による量子コンピューティング基盤を開発したと発表した。7月から全国にある基地局のパラメーターの最適化に順次適用することにしている。
同社が開発した基盤では、最適化問題を解くソルバーに量子アニーラ、疑似量子アニーラ、数理最適ソルバーを導入して冗長化を図り、メンテナンスによる運用停止を回避することで、常に基地局パラメーターの最適化を実施できるようにしている。また、複数のメーカーを採用して分析環境の柔軟性を確保し、条件や特性などが異なる中でも最適なソルバーを選択しながら精度の高いパラメーターの最適化計算を実行できるようにした。
開発した量子コンピューティング基盤の構成イメージ(NTTドコモより)
同社によれば、モバイル通信では端末への着信を可能にするために基地局から端末にページング信号を送り、信号を受信した端末からの応答に基づいて端末の位置を把握している。近年ではIoTデバイスなどの増加に伴ってページング信号のデータ量が増加傾向にあるといい、端末からの応答がない場合は広範囲にページング信号を再送しなければならないといった基地局設備の負荷も課題になっているという。
課題解決にはページング信号の削減が必要で、このために端末と基地局間の通信を記録した膨大なログ情報を基にした統計データを活用し、ページング信号をまとめて送信する基地局のグループの最適化を図るという。そこで今回開発した基盤を利用し、組み合わせ問題の計算に強い量子アニーリング方式を採用することで、膨大な組み合わせから少ないページング信号数で端末を発見するための最適なトラッキングエリアを短時間に割り出すことを目指すという。
基地局のグループ化イメージ(NTTドコモより)
同社は、これによりページング信号数を最小限に抑えて基地局リソースの余裕を確保し、着信が集中する場合などでも通信への影響がない通信品質の安定性に貢献すると説明している。ページング信号数削減のための量子コンピューティングのアルゴリズム開発は世界初の取り組みだといい、同社が東海、中国、九州の基地局で行った実証実験では、ページング信号を平均7%、最大15%削減し、着信集中時に現在よりも約1.2倍多く端末を接続できることに相当する効果を確認しているという。
実証実験の成果(NTTドコモより)