近年、生成人工知能(AI)がコードスニペットや提案、関連ドキュメントを求めに応じて生成してくれるおかげで、ソフトウェア開発者の仕事が楽になっているとさかんに言われている。もちろん、多くの開発者は生産性の向上を直感的に感じている。だが、そのことを裏付ける確かなデータがついに得られた。
だが、注目すべきは、AIは経験豊富な開発者よりも新人開発者にとってより有用であるという点だ。マサチューセッツ工科大学(MIT)とMicrosoft、プリンストン大学、ペンシルベニア大学の研究者らが実施した新たな研究では、そのように結論づけられている。研究者らは、MicrosoftとAccenture、社名は明らかにされていないが「Fortune 100」に選ばれた電子機器メーカーの3社で、4867人の開発者が参加して行われた3つの実験のデータを分析した。残念ながら、Accentureでの実験では参加者のうち40%が途中でレイオフされた、と研究者は述べている。そのため、現実の厳しさがAIの利点を減じる結果となった。
これらの実験は、3社によって通常業務の一環として実施され、開発者は、インテリジェントなコード補完を提案するAIコーディングアシスタント「GitHub Copilot」を利用した。「分析の結果、GitHub Copilotを利用した開発者の間では、完了したタスクの数が26%増加したことが明らかになった」と研究者らは指摘している。
重要なのは、経験が浅い開発者ほどAIの利用率が高く、AIによる生産性の伸びが大きかった点だ。「GitHub Copilotは、新規採用者や地位の低い開発者のタスク完了率を大幅に引き上げるが、在職期間が長く地位の高い開発者ではそういうことはない」と研究者は述べている。在職期間が短い開発者は完了したタスク数が27〜39%上昇したのに対し、在職期間が長い開発者は8〜13%と上昇率が低かった。
だがGitHub Copilotには「補完的な投資を必要とせず個人レベルで採用でき、開発環境に統合済み」といったメリットがあるにもかかわらず、採用率は「3つの実験すべてで100%を大きく下回り、約30〜40%のエンジニアは試そうともしていない」と研究者らは指摘し、「さらに、採用率はどの実験でも驚くほど違いがない。このことは、個人の好みやツールの有用性に関する認識など、ツールへのアクセス以外の要因が、エンジニアの使用決定において重要な役割を果たしていることを示唆している」と述べている。
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この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。