ICT来し方行く末

エンジニアになるために理工系出身であるべきか

菊地泰敏

2025-04-01 06:00

 4月に入り新年度を迎えて新社会人としての一歩を踏み出した方も多いと思う。本連載の読者の方々は、むしろ新入社員を受け入れる側が多いであろうか。いずれにせよ、新たな出会いをセレンディピティー(偶然性)の種として活用いただければ、AIに仕事を奪われる心配などないことを前回にお伝えした。私自身もセレンディピティーを求めて、この4月から新たな仕事に従事している。さまざまな偶然の出来事を楽しみにしている次第である。

 さて、エンジニアとして歩み始めた新入社員、あるいはエンジニアとしてのキャリアを目指す学生は何を学ぶべきかというのは深遠な話題である。もっとストレートな言い方をすれば、「エンジニアは理工系学部出身者でなければならないか?」というテーマについて今回考えてみたい。

 私がこれまで一緒に仕事をしてきたエンジニアは、その90%以上が大学の理工系学部の出身者であった。特に、電気、電子、情報、通信系の学科出身者が多かったことは事実である。とはいえ、理工系であっても機械工学や物理学、数学などを専攻していた方もいれば、経済、法学、文学といった、いわゆる文系学部の出身者がエンジニアとして活躍していた例も多数存在している。

 通信事業者のエンジニアは、多くの場合、機器の開発やプログラムのコーディングのような業務には携わらない。もちろん、通信事業者のエンジニアが機器の開発やコーディングに携わることが皆無ではない。しかし、通信事業者側で仕様を決め、メーカーやシステムインテグレーターなどに発注し、開発・製造してもらうことが多いといって差し支えないであろう。

 実務としては、市販の通信機器やサーバーなどを購入し、光ファイバーなどの媒体と接続し、適切な設定を施してサービスを提供する。そのため、さまざまなメーカーからどのような機器が開発・製造・販売されているかという情報を入手・整理し、その比較検討を行うことが重要な業務となっている。

 また、採用を決めた機器については、多くのコマンド※1を覚えて、コンフィグレーションを早く正確に設定できることが求められる。

※1:現在の機器類は、Graphical User Interface(GUI)で設定できるものがほとんどだが、多くのエンジニアはCommand Line Interface(CLI)で機器を扱うことが多い。

 そして、他の通信事業者やユーザーとの接続に対して、どのようなプロトコルを用いるかという判断・調整も重要な業務になっている。このため、プロトコルを理解し、どのパラメーターをどのように調整すると最適なネットワークサービスを提供できるか、ということに腐心している。

 機器の選定、光ファイバーなどのネットワークとの接続、コンフィグレーションの投入、そしてプロトコルの理解と利用――このように書いてしまうと、一度最適に設定すれば、後は機械が勝手に動いてくれると思われてしまうかもしれない。

 しかしながら、機器はハードウェアで故障もあれば、ソフトウェアがバグを内包していることもある。そして、地中に埋設した光ファイバーが道路工事で切断されてしまうこともあれば、プロトコルには“方言”もバージョンもあり、およそ一筋縄ではないのが常である※2

※2:私自身が経験した障害のうち感動すら覚えたのは、宇宙線によるハードウェア故障と、コウモリ蛾の幼虫が光ファイバーをかじって断線した障害である。

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