ServiceNowは米国時間5月6~8日、ネバダ州ラスベガスで年次カンファレンス「Knowledge 2025」を開催している。初日の基調講演に登壇した会長 兼 最高経営責任者(CEO)のBill McDermott氏は、AIを中心に同社の戦略と方向性を示した。中でもAIエージェントの分野では、「AI Control Tower」や「AI Agent Fabric」などを発表し、マルチAIエージェント時代に向けた新たなソリューションを打ち出している。
AI時代の課題とServiceNowの好調
ServiceNowは好調を維持している。4月に発表した2025年第1四半期の決算では、総売上高が前年同期比18.5%増の30億8800万ドル、サブスクリプション売上高が同19%増の30億500万ドルとなった。全ての売上高および収益性の指標でガイダンスを上回る好結果を収めている。
2023年に提供を開始した生成AI「Now Assist」の年間契約額は2億5000万ドルを超え、2026年までに10億ドルに達すると予想されている。
McDermott氏は、会場に集まった約2万5000人の顧客やパートナーに対し、「AIの市場機会は2030年までに22兆ドルに達する」と述べた。これはインターネット、モバイル、クラウドがもたらした市場機会よりも大きいとしつつ、「21世紀の問題は、20世紀のアーキテクチャーでは解決できない」と述べ、多くの組織で既存システムがAI活用を阻害している現状を指摘した。
実際、平均的なオフィスワーカーは生産性の40%を無駄に費やし、1日に17ものアプリケーションを行き来しているという。こうしたレガシーシステムが招く非効率は、米国だけで年間10兆ドルの損失を引き起こしていると、McDermott氏は指摘した。これは世界の国内総生産(GDP)の7%に相当すると付け加えた。
「AIがその潜在性をフルに発揮できるのは、全てのシステム、部門、機能にまたがった状態のときだ」(McDermott氏)。同氏はこれを受け、現在のアプリスタックは崩壊し、アプリケーションの数も減少することになるだろう、と予測した。

ServiceNowのBill McDermott氏
ServiceNowは、AI時代に向けた新しいアーキテクチャーとして、プラットフォーム上にワークフロー、AIエージェント、データを統合したものを掲げている。同社はこれまで、AIエージェント関連では機能別のエージェントや構築・管理ツールの「AI Agents Studio」、オーケストレーションのための「AI Agent Orchestrator」などを発表してきたほか、データ関連では「Workflow Data Fabric」や「RaptorDB」といった技術を既に披露している。
McDermott氏はServiceNowを「21世紀のエンタープライズの中枢神経系」と定義する。「われわれは650億のワークロード、4兆回の自動化されたトランザクションを処理しており、リアルタイムのエンドツーエンドなビジネス変革を推進している」
基調講演にゲスト登壇したNVIDIAの創業者でCEOのJensen Huang氏は、ServiceNowを「AIのオペレーティングシステムだ」と評価した。

NVIDIAのJensen Huang氏(左)とMcDermott氏