調査

注目は半導体関連--機能性エレクトロニクスフィルムの世界市場、2030年に3兆円規模へ

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2025-05-09 18:39

 富士キメラ総研は5月9日、エレクトロニクスフィルムの世界市場についての調査結果を発表した。これによると機能性エレクトロニクスフィルムの世界市場は、2030年に3兆円規模になる見込みだ。

 特に基板・回路分野と半導体分野での成長が著しいという。同分野においては、2030年には2023年比72.3%増の1兆3138億円に達する見込みで、同じく半導体分野では31.6%増の5173億円になる見込みだという。

 エレクトロニクスフィルムとは、電子機器やデバイスに用いられる機能性フィルムの総称。ベースとなるプラスチックフィルムに、コーティングや蒸着、ラミネートなどの加工を施すことで、電気的特性、光学的特性、機械的特性などを付与している。機能性フィルムには、光の透過、反射、吸収、偏光などの性質を制御し、ディスプレー、照明などに使われる光学フィルムや、タッチパネル・太陽電池に使われる導電性フィルムなどがある。

機能性エレクトロニクスフィルムの世界市場
機能性エレクトロニクスフィルムの世界市場

 この調査は、2024年10月〜2025年2月に実施された。調査・分析は、富士キメラ総研の専門調査員によるヒアリングおよび関連文献、データベースの活用で進められた。調査対象は基板・回路分野12品目、半導体分野9品目、ディスプレー分野12品目の機能性エレクトロニクスフィルム。

 2024年の全体の市場規模(基板・回路分野、半導体分野、ディスプレー分野)は、2兆3763億円と見込まれており、特に、AIサーバーや車載半導体に使用されるフィルムの需要が増加している。

 基板・回路分野の2024年の市場規模は前年比15.0%増の8767億円が見込まれる。フレキシブルプリント基板(FPC)が伸びており、中でも電動車(xEV)に搭載されるリチウムイオン電池(LiB)向けが好調だ。またリジッド基板(マザーボード基板、パッケージ基板)は、AIサーバー関連の需要が増加しているという。さらにフィルムコンデンサー用フィルムは、xEVの駆動用インバーターや再生可能エネルギー関連で需要が増えている。加えて、層間絶縁フィルムは、半導体チップのパッケージング技術の一種であるFC-BGA基板向けが大きく伸びると予測されている。

 一方、半導体分野の2024年の市場規模は前年比11.1%増の4366億円が見込まれる。特にAIサーバー向けの広帯域幅メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)に使用される非導電性接着フィルム(NCF)の需要が急増している。またキャリアテープやカバーテープは、チップ部品の小型化に伴い、自動化ニーズの高まりを受けて伸びている。

 ディスプレー分野の2024年の市場規模は、前年比9.4%増の1兆630億円が見込まれる。液晶ディスプレー(LCD)、有機ELディスプレー(OLED)ともに、テレビの大型化や、車載ディスプレーの搭載台数の増加により、市場は拡大傾向にあるという。ミニLED関連部材(QDシート)、OLED関連部材(円偏光板保護フィルム)の伸びが期待されている。

 なお富士キメラ総研は、エレクトロニクスフィルムにおける注目市場として、半導体パッケージ基板製造に利用される層間絶縁フィルムと、DRAMやCPU製造に使われる非導電性接着フィルム(NCF)を挙げている。

 2024年の層間絶縁フィルムの市場規模は488億円(2023年比116.5%)になる見込みで、2030年の予測では1295億円に達するという。FC-BGA基板向けが市場をけん引しており、今後もサーバーや通信機器市場の回復に伴い、堅調な市場拡大が予想される。一方、2024年の非導電性接着フィルム(NCF)の市場規模は、33億円(2023年比2.2倍)になる見込みで、2030年予測では101億円達するという。AIサーバー向けHBMでの需要が急増しており、今後の市場拡大が期待される。

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