米ZDNet編集長Larryの独り言

クラウド戦争に一石?--IBMによる3.8兆円規模のレッドハット買収が狙うもの

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2018-11-05 06:30

 IBMは340億ドル(約3兆8000億円)でRed Hatを買収することを発表し、クラウド市場(プライベート、パブリック、ハイブリッド)で戦うチャンスを手に入れた。そして、最終的に同社が狙うのは企業のマルチクラウド管理市場だ。

 これはIBMの歴史の中でも最大規模の買収劇だが、それには理由がある。これは非常に大きな賭けであり、IBMはすでにパブリッククラウド市場でAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform、Microsoft Azureとの競争で後れを取っている。

 大手パブリッククラウドプロバイダーの一角になれないのなら、管理する側に回ればいいのではないか?

 つまりそういうことだ。オープンソース界の人間はこの買収について心配するだろうが、同社はこれまで、オープンソース界に対して十分な理解を示してきた。そして企業も、(ソフトウェアとクラウドの永世中立国たる)Red Hatから、IBMとRed Hatの組み合わせに移行して、1カ所で多様なサービスを得られるようになることを受け入れるだろう。

 IBM-Red Hatの論理が合理的であることは認めざるを得ない。両社の計画は、ハイブリッドクラウド市場とマルチクラウド環境管理の市場を狙うというものだ。IBMはRed Hatを獲得することで、ソフトウェア面での強みを得るとともに、AWSとの関係も深いVMwareとも、OpenStackで対抗できる可能性がある。

 発表のポイントは次のようなものだ。

  • IBMはRed Hatの株式1株あたり190ドルをキャッシュで支払う。
  • IBMの最高経営責任者(CEO)Ginni Rometty氏は、多くの企業では20%しかクラウド化が進んでおらず、「経費を節約するためにコンピューティング能力をレンタルしている」と述べている。残る80%が真のビジネス上の価値を解き放ち、成長を促すとして、ハイブリッドクラウドの可能性について話した。
  • Red HatのCEO、Jim Whitehurst氏は、同社はIBMによる買収で規模のメリットを得られる一方、オープンソースに対するコミットメントは今まで通り維持されると述べている。
  • Red HatとIBMの両方が、買収後の会社は「ハイブリッドマルチクラウドの普及」を加速すると述べている。
  • Red HatはIBMのハイブリッドクラウド部門の独立した部門として今の形を維持し、IBMに対して成長とソフトウェアの売り上げ、クラウド事業を成長させるための手段を提供する。
  • IBMは買収資金の調達に必要なキャッシュ、クレジットライン、ブリッジラインを十分に保有しており、投資格付けを維持するため規律を持って買収を進めるという。またIBMは、株式購入プログラムを一時停止する。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  2. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  3. セキュリティ

    経営陣に伝わりづらい「EDR」の必要性、従来型EDRの運用課題を解決するヒントを解説

  4. セキュリティ

    AIサイバー攻撃の増加でフォーティネットが提言、高いセキュリティ意識を実現するトレーニングの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    中小企業のDX奮闘記--都市伝説に騙されずに業務改善を実現したAI活用成功譚

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]