米連邦通信委員会(FCC)の委員長から間もなく退任するMichael Powellは米国時間8日、同氏にとっての「最後の舞台」で講演を行い、同氏の「ハンド・オフ」政策の下で発展を遂げたインターネット電話業界に別れを告げた。
Powell はカリフォルニア州サンノゼで開催されているSpring 2005 Voice on the Netカンファレンスに出席した数千人の聴衆に対し、「われわれは(インターネット電話業界に)話題を提供した」と語った。
8日の講演で、PowellがVoIPに関する実績についても、歴史にその名を残したいと考えているのは明らかだった。VoIPとは、インターネット接続を電話回線の代わりとして使えるようにするための技術のこと。VoIP電話は、互いにPCを使って会話する場合のように、完全にインターネット上で行われる通話に関してはコストがかからない。最近では、携帯電話同士の通話に同技術が使用されるケースも増えている。北米で、携帯電話と固定電話に無制限に電話がかけられるVoIPサービスの一般的な月額料金は20〜30ドル程度だ。確かに、顧客が従来の固定電話に対して電話をかけるとVoIPサービスプロバイダに若干のコストがかかる。しかし、VoIPサービスから電話をかける場合は、音声データの伝達がほとんどインターネットを介して行われるため、その分の通話は規制の対象にならない。
Powellは任期中、ブロードバンド全般に加え、VoIPに対しても、自由競争を促すアプローチを一貫して主張してきた。それが原因で、民主党員の2人の委員や、時に同じ共和党員のKevin Martinともしばしば対立した。Powellの前任者であるWilliam Kennardは、電話会社に自らのネットワークをライバル企業に強制的に開放させ採算のとれない契約を結ばせるという、アプローチをとった。Powellはこのアプローチを継続するのではなく、ケーブルとDSLとの競争をより活発なものにする政策をとるべきだと強く訴えた。
Powellの一貫したブロードバンドに対する寛容なアプローチは、米通信業界の将来に関する激しい対立に火をつけた。そしてその対立は、同氏の退任後も長期に渡って続くことになる。インターネット電話会社の幹部らが心配していることの1つは、恐らくFCCがPowell退任のはるか後に作成すると見られる一連の規則だ。それに対しPowellは、インターネット電話企業幹部が大部分を占める聴衆に対し、「常に不満を表明し、騒ぎ立てること。多少は確信を持って、未来に飛び込みなさい」と語った。Powellは、詳細は語らなかったが、FCCでは、近い将来「透明性」を提供するための方法を検討中だと述べた。
Powellは8日の講演の中で、「VoIPこそ、これまで私が懸命に取り組んできた仕事を最も明確に象徴している」と語った。しかし、VoIP技術の重要性が保証されているわけではなく、規制緩和を軸とするビジネス環境が今後も続く保証もない。「VoIPも永遠にロックスターではいられない」(Powell)
Powellは2001年にBush大統領からFCCの委員長に指名された。現在、高速インターネット接続、無線、VoIPを擁する市場が活況を呈し、ほとんど規制のない自由な環境を享受できているのも、同氏が、1990年代に当時では想像もできなかった様々な手法を凝らしたおかげだ。Powellは2005年1月に、委員長職から退任すると表明していた。