ビジネス分野でのコンピューティンググリッドの普及を目指す2つの団体が、今後数週間のうちに、それぞれ重要な発表を行うことになっている。コンピューティンググリッドとは、ネットワーク上に分散する様々なコンピュータを1台のマシンのように機能させる仕組みを指す。
CNET News.comが入手した情報によると、Enterprise Grid Alliance(EGA)という業界団体は5月に、グリッドを企業のニーズに合ったものにするための初の勧告をリリースするという。
EGAは、ビジネス分野でのグリッドコンピューティングの推進を目的に、1年前に結成されたグループで、今回発表するガイドラインは、セキュリティから、使用量に応じて料金を支払う公共料金のような価格体系の業界基準まで、さまざまな技術的問題を扱ったものになるという。
また、今週末にはグリッドコンピューティングの研究者や企業がつくるGlobus Allianceが、複数の異種マシン上で動作するアプリケーション開発のための「Globus Toolkit 4.0」をリリースする。
GlobusのツールやEGAの技術勧告は、長年にわたってグリッドコンピューティングが使われてきた学術分野ではなく、ビジネス分野におけるコンピューティングタスクに主眼を置いたものだ。また、おそらくさらに重要なのは、これらの取り組みがグリッドに関する業界標準をつくりあげようとしている点だ。専門家らはこうした標準がまだ存在していないと指摘している。
「アイディアを研究室からビジネスの世界に引っ張り出すことがとても難しい」というのは、Univa最高経営責任者(CEO)のSteve Tuecke。同氏は昨年12月に、Globus Toolkitを使って商用システムを開発するため、グリッドコンピューティング分野の著名人数人とともにUnivaを立ち上げた。「科学の世界で利用されているだけでは成功できない」( Tuecke)
専門家らによると、現在のグリッドコンピューティング業界はおおむね約10年前のインターネットと同じ段階にあるという。商用利用の顧客が、広範囲に及ぶネットワーク間で効率的にコンピューティングリソースを共有できるようになるまでには、標準化されたさまざまな種類の製品が必要となる。
現在、グリッドコンピューティングの利用例は、その大半が1つの企業内でベンダー固有のツールを用いて実装されていると、IlluminataのアナリストJonathan Euniceは述べている。
「いまのところは、グリッドを構築するためのツール類しかなく、どこかで買ってきてそのまま使えるようなものはない。商業的な発展の可能性はあるが、それまでに片付けねばならない課題はまだたくさんある」(Eunice)
コンピューティンググリッドの定義ははっきりしたものがないが、通常は、多数のコンピュータが、うまく組織されたアリ塚のように仕事を調整するネットワークを表す言葉として用いられている。
現在、グリッドコンピューティングという言葉から大半の人が思い浮かべるのは、SETI (Search for Extraterrestrial Intelligence) プロジェクトのような未来的なシナリオだろう。SETIでは余ったPCの処理能力を地球外生命体の探索に利用している。
しかし、いくつかの団体では、企業におけるデータ処理のような、もっとありきたりな目的にもグリッドを活用しやすくするための取り組みを進めている。
たとえば、Globus Toolkit 4は、ネットワーク上に分散するサーバやストレージ、データベースなどの計算リソースを利用するアプリケーションを開発しやすくするために考えられている。このオープンソースのソフトウェアには、Webサービスをはじめ、既存の仕様が数多く用いられている。
このソフトウェアを使うことで、企業は手持ちの計算リソースをさらに効率よく活用できるようになると、Globus Allianceの幹部らは述べている。サーバやデータベースなどは通常、特定の用途のために購入されることから、これらの計算リソースが十分に活用されていない場合も多い。
一方、EGAではGlobusよりも大きなミッションを掲げている。同グループでは、グリッドコンピューティングの利用加速や、その利用から高い効果が得られる分野の定義、そして各種標準の普及などを、複数年にわたって進めていく計画だ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ