シンクライアントの仕組みを探る(1/2)

高崎達哉 2005年10月06日 10時00分

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現在、個人情報漏洩に関する事故の報道が後を絶たない。今回は、情報漏洩対策として注目されているシンクライアントの仕組みを解説する。

シンクライアントの概念

 個人情報漏洩事故の原因の多くは、個人情報の入ったノートPCやUSBメモリを外出先で紛失するというものである。対策としては、データを暗号化するなどの方法もあるが、暗号化されたデータの入ったものを紛失した場合でも、やはり「個人情報漏洩」となってしまうため、データ自体を持ち出せないようにするための対策が必要となってきた。

 現在のコンピュータシステムで利用されている形態を図1に示す。この形態では、通常、OSやクライアント用アプリケーションはクライアントのローカルディスクにインストールされ、クライアント上で実行される。そして、データは、ファイルサーバまたはクライアントのローカルディスクに分散して保存する。

図1 現在のコンピュータシステムの利用形態

 個人情報などがクライアントのローカルディスクに保存されていた場合は、クライアントが盗難にあうことによって個人情報が流出したり、ユーザがさらにUSBメモリなどの可搬媒体にコピーし、それを紛失してしまうことによって個人情報が流出する可能性がある。

 そこで注目されてきたのが、クライアント側にディスクを持たないシンクライアントである。

 1990年代にもシンクライアントがブームになったことがあったが、この時は、クライアント価格の低減などの、いわゆるTCO削減が主な目的であった。しかし、利用できるアプリケーションの制約があり使い勝手が悪いということや、PCの価格が急激に下がってきたことでTCO削減のメリットが少なくなってしまったということから、ブームは終わってしまった。

 現在では、パッチ管理が容易にできることやディスク上にデータを残さないことから、シンクライアントはTCO削減よりも情報漏洩対策として再び脚光を浴びることになった。

シンクライアント導入の利点

 シンクライアント導入の利点は大きく以下の3つがある。

・運用管理コストの削減

 シンクライアントでは、OSやアプリケーションをクライアント側ではなく、サーバ側にインストールするため、これまではクライアント毎に行っていたバージョンアップ作業やパッチ適用作業を管理者が一括してできるようになり、運用管理コストを削減することができるようになる。

・セキュリティ対策の徹底

 パッチの適用や、セキュリティ強化のための設定、ウイルス対策ソフトやスパイウェア対策ソフトなどのインストールなどの作業を、ユーザに頼らずに管理者が行えるようになるため、迅速なセキュリティ対策を行うことができる。

・クライアントの故障率の低減

 クライアントにはハードディスクや光学ドライブなどが必要なくなるため、故障しにくくなるという利点がある。

シンクライアントの形態

 シンクライアントの方式には標準というものはなく、ベンダによってその実現方式はさまざまである。しかし、大きく分けて、サーバベースドコンピューティング(SBC:Server-Based Computing)とストレージセントリックコンピューティング(SCC:Storage-Centric Computing)の2つの方式に分けることができる。

サーバベースドコンピューティング

 SBC(サーバベースドコンピューティング)は、キーボードやマウスの入力情報をサーバに送り、サーバ側でOSやアプリケーションを実行させ、その画面データをクライアントに送信する方式である。このSBCには、1台のサーバを複数のクライアントで共有する「サーバ共有型」と、クライアント1台につき1台のサーバを用意する「サーバ非共有型」の2種類がある。

・サーバ共有型

 SBCのサーバ共有型は、1台のサーバを複数のユーザが共有する方式である。各クライアントに散らばっていたOSやアプリケーションの運用管理をサーバ1台に集約できるため、運用管理コストを大幅に削減することができるというメリットがある。しかし、ユーザのデータ領域は別れているが、OSやアプリケーションは複数ユーザで共有するため、利用するアプリケーションがマルチユーザでの利用に対応している必要がある。

 クライアントでは、キーボードやマウスの入力情報の送信や、サーバから受信した画面データの表示などを行う必要があるため、最小限の機能を持つOS(Windows XP Embeddedなど)やアプリケーションをROM上に搭載している。

図2 サーバベースドコンピューティング(サーバ共有型)の仕組み

・サーバ非共有型

 SBCのサーバ非共有型では、OSやアプリケーション、そしてCPUやメモリなどのリソースを共有せずに、ユーザごとに別のサーバを割り当てる。通常は、サーバ側にブレードPCを利用するため、ブレードPC型とも呼ばれる。ユーザのデスクに設置されていたPCの本体のみをサーバルームのラックに格納したと思えば分かりやすいだろう。

 サーバ共有型のように、OSやアプリケーションを複数ユーザで共有して使用することはないため、利用できないアプリケーションなどの問題はない。ただし、パッチの適用やソフトウェアのインストール、バージョンアップなどの管理はサーバ側で行うことができるが、ブレードPCごとに1台ずつ行う必要があるため、サーバ共有型と比較して、運用管理コストの削減効果は少ない。

 クライアントでは、キーボードやマウスの入力情報の送信や、サーバから受信した画面データの表示などを行う必要があるため、最小限の機能を持つOS(Windows XP Embeddedなど)やアプリケーションをROM上に搭載している。

図3 サーバベースドコンピューティング(サーバ非共有型)の仕組み

 以上、今回は、シンクライアントの特徴と、シンクライアントの仕組みのひとつであるSBCについて解説した。次回は、シンクライアントのもうひとつの仕組みであるSCCについて解説する。

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