シンクライアントの仕組みを探る(2/2)

高崎達哉 2005年10月27日 17時40分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今回は、情報漏洩対策として注目されているシンクライアント技術の一つであるSCCの仕組みと、シンクライアント導入時の検討項目について紹介する。

ストレージセントリックコンピューティング

 ストレージセントリックコンピューティング(SCC:Storage-centric Computing)は、サーバ側にディスクを用意するが、実際のアプリケーションの実行はクライアント側で行う方式である。つまり、ハードディスクはサーバ側にあり、アプリケーションを実行するために必要なCPUやメモリなどのリソースはクライアントのものを利用する。

 SCCでは、図1のように、シンクライアント(SBC型のようにCPUやメモリなどのリソースは従来のPCと同様に備える必要があるため、シンクライアントとは呼ばれず、ディスクレスクライアントと呼ばれることもある)の起動時に、サーバに保存されているOSイメージをダウンロードして起動する。ネットワークブートは、ネットワークカードに搭載されているPXE(Preboot eXecution Environment)機能を利用するため、クライアントにはOSやアプリケーションは必要なく、ディスクが搭載されていない通常のPCでも構わない。

図1 ストレージセントリックコンピューティング(ネットワークブート型)の仕組み

 図2にPXEブートの仕組みを示す。PXEブートでは、最初にネットワークカードのROMに格納されたPXEクライアントによってDHCP要求が行われる。この時、クライアントのIPアドレスなどと同時に、PXEサーバのIPアドレスが通知される。すると、PXEクライアントは、PXEサーバに対してPXE要求を送信し、NBP(Network Bootstrap Program)と呼ばれる、OSイメージを取得して起動するためのプログラムのファイル名を取得する。そして、TFTPを使用してこのNBPをダウンロードし、実行する。すると、実行されたNBPは、ディスクイメージが格納されているサーバからディスクイメージをダウンロードしてOSを起動する。

 SCCでは、ディスクイメージを共有して使用することもできるし、ユーザごとに別々にディスクイメージを作成しておくこともできる。ただし、OSやアプリケーションは、クライアント側で動作するため、クライアントのハードウェアが異なる場合は、機種ごとに別のディスクイメージを用意しておく必要がある。

図2 PXEブートの仕組み

SBCとSCCの比較

 以上、SBCとSCCのそれぞれの仕組みについて説明したが、その違いをまとめると表のようになる。

表 SBCとSCCと違い

シンクライアント導入時の検討項目

 以下にシンクライアントを導入する場合に検討しておくべき項目を紹介する。

・使用するアプリケーションのリストアップ

 現在、業務で使用しているアプリケーションを調査し、サーバ側で用意しておくべきアプリケーションをリストアップしておく必要がある。特に、ブラウザやメーラなどのアプリケーションはユーザ毎に異なる場合があるが、すべてをサポートすることはできないため、ユーザに十分説明をしてアプリケーションを統一する必要があるだろう。

・OSおよびアプリケーションのライセンスの確認

 OSやアプリケーションを複数のユーザで共有して使用する場合には、ライセンス形態について確認しておく必要がある。アプリケーションを使用しないユーザも含めて全ユーザ数分のライセンスが必要な場合や、アプリケーションを使用するユーザ数分だけでよい場合がある。

・アプリケーションの事前動作検証

 場合によっては、動作しないアプリケーションが存在する。このため、業務で利用しているアプリケーションが導入を検討しているシンクライアントで動作するのかどうかを事前に検証しておく必要がある。特に、ソフトフォンや電子会議アプリケーションなどの音声や動画を双方向でやり取りする必要のあるアプリケーションを使用する場合は、シンクライアント側から音声や動画を送信できる機能があるかどうかを確認しておく必要がある。

・利用帯域の調査とネットワーク設計

 シンクライアントでは、ネットワーク帯域を大量に消費する場合がある。特に、SCCの場合は、シンクライアントの起動時にOSやアプリケーションをネットワーク経由でダウンロードする必要があるため、朝の業務開始時などのアクセスが集中する時間帯には大量のネットワーク帯域が消費する。SBCの場合も、画面を頻繁に変更するようなアプリケーションを使用する場合は、大量にネットワーク帯域を消費する。これらのことを考慮した上でネットワーク設計を行う必要がある。

モバイル環境でのシンクライアントの利用

 シンクライアントは、情報漏洩対策の切り札とも言われているが、実は情報漏洩の原因となることの多い、モバイルでの利用には対応が進んでいない。

 モバイルでシンクライアントを利用するためには、まず、シンクライアントが自力で何らかの通信手段を使ってインターネットに接続し、さらにVPNで社内ネットワークにアクセスして、サーバまでのアクセスパスを確保しなければならない。このためには、シンクライアントのROMに、携帯電話やPHSなどでインターネットにアクセスするための、ドライバソフトウェアやアクセス用ソフトウェア、そして、社内にVPNを構築するためのVPNソフトウェアを搭載しなければならない。

 以上、2回に渡ってシンクライアントの仕組みについて説明した。シンクライアントを導入したからと言って情報漏洩対策が万全になるわけではない。シンクライアントができることとできないことをきちんと理解し、他の対策とあわせて導入することが大切である。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連キーワード
セキュリティ

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]