ただ、コストもひとつの要素ですから、コスト削減には努めています。EDSもインドに4000人近くの人員を抱えていますが、インドでは主に欧米の案件を扱うことが多いですね。一方、日本の案件については、距離的な近さや漢字文化という共通点などもあることから、中国での開発を考えています。現在パイロットベースですが、ある日本の顧客のアプリケーション開発を中国で受けています。
グローバル案件についても、すでに上海に開発拠点がありますが、年末までには別の場所にも拠点を設け、人員を強化する予定です。ヨーロッパやアメリカも、中国拠点の拡大を望んでいますから。中国の教育レベルは非常に高く、インドに匹敵するほど優秀な人材がそろっています。日本にとっては、文化的にも距離的にも遠いインドより、中国の方が親和性が高いため、日本から中国へのアウトソーシングは今後も伸びるでしょう。
ただ、課題としては、日本のようなサービスカルチャーがあまり浸透していないように感じることです。日本の品質に対する要求は非常に高いため、アウトソースする案件については、アプリケーションの重要度を考慮しなくてはなりません。
--では、グローバルな大型案件で一番の競合となるIBMに対しては、どう戦っていくのでしょう。
これも先ほどと同じで、やはりEDSとしての強みにフォーカスすることです。IBMとは違ってEDSは独立系で、ソフトもハードも作っていないため、縛りがありません。どのベンダーの製品でも扱えるため、何かを守らなくてはいけないといった意識は持たずに済みます。ここがEDSの強みです。
--EDSとして注目している分野や業種はどこにありますか。
直接EDSが案件を手がけるかどうかは別にして、レガシーが多く残っている分野は、レガシー改革をする必要があるので注目しています。業種としては、金融であればメガバンクですね。合併や統合が頻繁に起こっているため、システムがますます複雑化しています。また、郵政の民営化なども、大きな課題となるでしょう。
EDSとしては、金融の中では保険や地方銀行に実績があります。自動車業界、小売業界もEDSの主要なターゲットです。こうした実績のある分野をさらに拡大していきたいと考えています。
具体的には、特に銀行や保険市場に対し、セキュリティサービスや日本版SOX法などの法制対応、業務継続化ソリューション、クレジットカード発行業務ソリューションなどを提供します。自動車業界に対しては、大手製造メーカーを中心に、EDSグループ全体でグローバルレベルでのITアウトソーシングサービスを展開します。また、プロダクト開発管理導入のためのコンサルティングサービスも開始する予定です。
--日本市場に対する戦略などはありますか。
このところ、日本企業がEDSの得意分野に注目し始めたことを感じます。日本市場での需要も伸びているため、2006年は昨年度比で20%の成長を目指しています。
これまで日本企業の多くは、ITアウトソーシングがうまく活用できていませんでした。自分たちでシステムを組み立て、問題が起こっても対応しきれないことがありました。これでは、生産性が低下してしまいます。この事実を経営者が認識しはじめ、本業に集中すべきだと気づいたのです。ITはITのプロに任せればいいというトレンドが、EDSにとっても追い風となっています。このトレンドに乗って、顧客ニーズを的確にとらえたいと思います。
2005年末に実施されたEDSグローバルの組織変更の中で、日本はEDSアジアの戦略的な中心拠点として位置づけられました。この任務を果たすべく、EDSジャパンのビジネスモデルが他の国々でも展開されるよう努めたいですね。