ICカードでMFP管理を高度化 実践から新ワークスタイルを創出 - (page 2)

石田巳津人(月刊ソリューションIT編集部) 2006年04月25日 10時00分

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新しいワークフローを定着させる運用を開始

 同時に、こうした新しいワークフローを、定着させる取り組みも進めている。

 社員のコスト意識を高めるため、MFPのランニングコストは個人単位で集計し、それを部門に課金する。その代わり、利用ログから利用傾向や機器稼働状況を分析し、実績レポートや製品ニーズレポートとして、利用部門へフィードバックしていく(図1参照)。

図1 図1 ICカードを利用してOA機器管理業務負荷を軽減

 MFP利用ログからは、アプリケーションソフトごとの利用傾向も把握できる。たとえば、PowerPointファイルの出力で両面・集約印刷がどれぐらい使われているかも分かるのだ。

 漠然と、紙を減らすために両面・集約印刷を推奨しても、比率は高まらない。だが、アプリケーションソフトまで踏み込んだデータの裏付けがあれば、現場の社員も動いてくれるという。

 文書印刷のセキュリティ対策が注目される現在、MFPでICカード運用は一般的になっていきそうだ。リコーとしては、自身が先んじてノウハウを蓄積していく構えだ。

移転前に逆戻りしないよう巡回コンサルでヒアリング

 本社移転に伴う業務変革で、もう1つの大きな柱が「紙文書の電子化」だ。情報活用の基盤を整える目的がある。

 従来からリコーの各部門は、自社製品の文書管理システム「Ridocドキュメント サーバー」を使って、電子化に取り組んできた。だが「運用方法が部門によってバラバラで、機能を充分に使い切れていなかったり、運用管理に負担がかかっていた」(栗野氏)ため、一元的に統合管理することにした。

 新本社に移る際、オフィスの保管スペースを減らしている。そのため、各部門は抱えていた紙文書を最大約40%減少させてきているという。問題は、この減量した状況から、逆戻りさせないことだ。

 栗野氏は「Ridocのような文書管理システムは、フォルダの分け方など細かな点で使い勝手が良くないと、現場の人間は使ってくれません。そこで、Ridocの顧客サポートを手がけるスタッフが定期的に各部門を回り、利用状況をヒアリングしながら改善策を提案していくつもりです」と話す。

 紙文書としては、受注など一部の業務を除いて、受信FAXの電子化にも新たに取り組み始めた。FAXサーバーで受けた受信FAXを、NotesサーバーのDBにイメージデータとして蓄積。各FAX番号の管理担当者に電子メールで受信を知らせる。  リコー社内ではワークフローの電子化が進みつつあるため、フローを寸断する紙文書はなるべく取り除くという方針だ。

最大の利点は顔・ひざ突き合わせ

 新本社ではリコーとして初めて、ワークプレイスの変革にも取り組んでいる。従来は、部門ごとにレイアウトを決めていたが、「ユニバーサルレイアウト」として、一般オフィスフロアには、全フロア統一のレイアウトを取り入れた。

 統一レイアウトは、収容人員約200名に対してブチ抜きフロアに23列の長机を設置。部課ごとに“シマ”を作らず、基本的には必要な席数を割り当てていくだけ。その分、会議室や倉庫など共有スペースが、執務スペースの近くに配置されている(図2参照)。

図2 図2 従来のレイアウトと新社屋でのユニバーサルレイアウト

 設備面では、全フロアが無線LANに対応しているほか、全席に有線LAN端子を用意している。また、部門代表番号を割り当てた少数の電話機以外は固定電話を廃止し、事業所用PHSを本社の全社員に配布した。

 また、銀座本社と海老名、新横浜の各拠点をVoIP網で結び、内線電話のIP化を成し遂げた。今年1月から拠点間でのPHSのローミングも可能になった。

 つまりPHSとPC、利用者固有の袖机を持ち運べば、本社内を自由に移動できる。人事異動も容易になり、費用も削減可能になったという。新本社へは2005年12月に移転を完了したばかりだが、早速、異動があった部門では効果が出ているという。

 ワークプレイス変革というとフロア効率アップなどの指標がよく持ち出されるが、それに対して、栗野氏は次のように考えている。

 「フロア効率は、それほど重視していません。営業部門などは、これまで狭い環境で働いていたので、逆に1人当たりの占有面積は増え、快適になっていると聞いています。それと、散らばっていた既存オフィスを集約したことで、フェース・ツゥー・フェースのコミュニケーションを取りやすくなった点が喜ばれています。いくらITが発達したからと言って、これに勝るものはないようです」。

 拠点が集約されたのを機に、バックエンドの情報システムの統合化も推進している。

 たとえばリコーは、国内でも屈指のNotesユーザーであることが知られているが、従来は、そのための部門別のファイルサーバーが散在していた。運用管理は、部門任せで基準が統一されておらず、セキュリティやコストの面から好ましい状況とは言えなかった。そのため現在、1台の全社共有ファイルサーバーへ集約するため、部門ファイルサーバーを17台から6台にまで減らした。

 さらに、Notesサーバーとは別に、新しい情報活用の基盤となる全社共通の企業ポータルも構築している。これに、基幹システムや部門システム、Notesサーバーなどをデータ連携させていく。当面、拠点の大幅な集約で分かりにくくなった、全社人員の配置をポータル上で把握できるようにしていくということだ。

 リコーのワークスタイルとワークフロー変革への取り組みは、まさに始まったばかり。「1つの想定のもとで我々の取り組みは始まっていますが、それが絶対に正しいとは限りません。これからの実践を通して内容を改善していくつもりです」と、栗野氏は今後への柔軟な姿勢を見せる。

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