インテルは4月25日、企業向けPCのプラットフォームとなる新ブランド「インテル vPro テクノロジー」を発表した。これは、同社がこれまで開発コード名「Averill」と呼んでいたものだ。インテルがプラットフォームのブランドを発表するのは、2003年1月に発表したモバイルPC向けプラットフォームの「Centrino」と、2006年1月に発表したデジタルホームPC向けプラットフォームの「Viiv」に次いで3番目となる。
インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏は、現在企業で求められていることとして、セキュリティや管理性を挙げ、vProがこうした企業ニーズに応えられるだけでなく、コスト削減や電力効率および性能の向上に結びつくものだとした。
vProには、デュアルコアプロセッサの「Conroe」と、「インテルQ965 Expressチップセット」、「インテルPRO/1000ネットワークコネクション」などの構成要素に加え、管理性を高めた第2世代の「インテル アクティブ・マネージメント・テクノロジー」(インテルAMT)や、仮想化機能の「インテル バーチャライゼーション・テクノロジー」(インテルVT)が搭載される。2006年後半より、vProロゴの入ったPCが各メーカーより提供される。
Intel デジタルエンタープライズ事業本部副社長 兼 プラットフォームコンポーネント事業部長のTim Dunn氏は、なぜvProが必要かについて次のように述べている。「PCサポートの件数の割合は、87%がリモートで解決でき、オンサイトで解決しているのは13%しかない。それなのに、PCサポートにかかるコストの割合は、リモート解決が全体の54%、オンサイトでの解決が46%と、約半分にも上る。これは人件費がかさむためだが、実際にオンサイトにサポート人員が出向くと、電源が入っていないだけのケースや、OSが起動しないというケース、ウイルスに感染していたというケースなど、オンサイトでなくとも解決できることが多い。これらをvProによって解決することで、サポートコストを削減し、イノベーションに資産を回すことができる」(Dunn氏)
vProに搭載されるインテルAMTでは、電源の入っていないPCの監査や、ダウンしたシステムのリモート修復が可能なほか、ウイルス対策ソフトなど必要なソフトウェアのエージェントが無効になるのを防止する機能や、万が一ネットワーク内のPCがウイルスに感染した場合、即座にネットワークからそのPCを切り離し、パッチを送った上でPCを修復、再度ネットワークに接続するといった機能を備えている。
また、インテルVTでは、1台のPCで複数の独立したハードウェア環境が提供できる。片方のパーティションはユーザーが通常利用する領域とし、もう片方はユーザーからは直接見えないように隔離して、IT部門が設定や特定のサービスを提供するための環境とするなどの使い方ができる。
インテルは同日、Symantecとの協業も発表している。両社は共同で、vProに向けたセキュリティソリューションを構築する。インテルVTによって隔離された環境にSymantecのセキュリティソリューションを提供し、ユーザーのOSから独立した環境でセキュリティ効果を高める。
またvProでは、日立製作所の運用管理ソフト「JP1」との連携も実現する。JP1とインテルAMTを組み合わせることで、「ハードとソフトの両面からTCO削減と高機能化が実現し、コンプライアンスへの対応も強化できる」と、日立製作所 ソフトウェア事業部 事業部長の中村孝男氏は述べた。
もちろん、プラットフォームの中で中核的な存在となるのはConroeプロセッサだ。Dunn氏は、「Conroeは従来のチップよりパフォーマンスが40%向上しただけでなく、電力効率に優れている。新Conroeを採用したPC5万台のライフサイクルにおける電力コストを旧世代のプロセッサと比較した場合、米国では150万ドル、日本では330万ドルのコスト削減が可能だ」と説明した。
今後のvProの方向性としてDunn氏は、モバイルへの対応や、管理およびセキュリティ機能の拡張、プラットフォーム全体の仮想化、コア数の増加などを挙げた。モバイル向けのプラットフォームとしてはすでにCentrinoが存在するが、「企業向けのモバイルプラットフォームブランド名がどうなるかは未定」(Dunn氏)としている。日本法人社長の吉田氏は、「モバイル製品は特に日本での需要が高い。同様の機能を持ったモバイル対応製品をこれからしっかり構築していきたい」と述べた。