ざわつきを感じてもらいたい
「フリーアドレスを検討する企業が毎週1社ぐらい、この現場を見学しに来ているが、このオフィスのざわつきを感じてもらいたいと思っている」(大石氏)。大石氏がそう語るように、ITビジネス事業本部のオフィスでは、静まることがないようだ。取材中でも、いたるところで打ち合わせが交わされており、活気にあふれていることが分かる。
ある自動車大手では、問題が起きたら即座に役職や年齢、性別を超えて気軽に「ワイワイガヤガヤ」と話し合える雰囲気(「ワイガヤ」精神)が重要だとされているが、日本コムシスのITビジネス事業本部でもフリーアドレスが導入されてからは、「ワイガヤ」精神が実践されていると言ってもいいだろう。

仕事をするうえでは、ワイガヤできることも重要だが、状況によって、誰とも会話せずに1人だけで没頭することも必要になってくる。日本コムシスでは、1人だけで仕事ができる環境が必要であることも理解しており、丸いテーブルの1人用席も用意してある。
プレゼンスの把握をどうするか
フリーアドレスを導入するときに思い浮かぶのが、「誰がどこにいるのか、分からなくなってしまうのではないか」ということだろう。固定されたデスクならば、誰がどこに座っているのか簡単に把握することができるが、日本コムシスの場合、どのようにして、この問題を解決したのだろうか。
同社ITビジネス事業本部では、この問題に対してウェブカメラで答えを見いだそうとしている。「情景共有カメラ」と呼ぶウェブカメラをオフィスの数カ所に設置して、オフィス全体を撮影し、誰がどこに座っているのか、プレゼンス情報を画像で表示しているのである。


オフィス入り口に備え付けられた端末には、その時点でオフィスにいる従業員が一覧表示され、他部署あるいは他社から来た人間は、その端末から会いたい人間がどこに座っているのかを知ることができる。
プレゼンス把握の究極はカメラ
日本コムシスITビジネス事業本部は、大崎オフィスと品川オフィスに分散しており、情景共有カメラによってプレゼンス情報を把握するシステムは各フロアに導入されている。情景共有カメラから撮影されたプレゼンス情報は、ITビジネス事業本部で働く従業員のノートPCで表示されるようにもなっている。この仕組みによって、同じ部署で働く人間が今どのオフィスのどこに座っているのか、手元のノートPCで簡単に把握できるようになっているのである。
カメラ撮影による画像で相手のプレゼンスを把握することで、どうやって連絡を取るべきかどうかも判断しやすくなる。撮影された映像の相手の状況から、電話をかけていい状態かどうかが分かるからだ。小阪氏は「プレゼンス情報を把握する究極の方法はカメラによる動画になるのではないか」と語っている。