ペーパーレス化も同時に進める
導入するにあたって、同社の場合、ペーパーレス化もトップダウンで進めており、できる限り紙を利用しないようにしている。もちろん個人でどうしても必要とされる紙は出てこざるを得ないが、そういった紙は、職場に用意された個人用のロッカーにしまうことにしている。
職種によっては、ペーパーレス化を効率的に行えるかどうか異なるが、ITビジネス事業本部ソリューション部の場合、基本的にはSEと営業の2つからなっており、ペーパーレス化は進めやすい環境にあった。というのは、必要となる資料はもともとPC上で作られたデータだからだ。業務で必要とされる資料はデジタルデータとして、部門ごとのファイルサーバに置くことができる。
フリーアドレスとペーパーレス化を進めたおかげで、たとえば会議でも、いちいち紙の資料を配らなくても、各自がノートPCと大型のディスプレイを併用するというスタイルで会議を進行できるようになっている。池上氏が「仕事のやり方が変わった」と説明するのは、こうした点があるからだ。
壁を低くする
「やり方が変わった」のは、これだけではない。 フリーアドレスを導入するうえでよく語られることだが、所属する部署以外とのコミュニケーションが増えるというメリットがある。このメリットは、日本コムシスでも同様だ。「営業とSEなどの部門間の"壁"が低くなり、コミュニケーションが確実に増えている」(ITビジネス事業本部ソリューション部宅内新ビジネス推進部門課長代理の小阪直人氏)という。これまでは部門間の“壁”が高かったために、仕事上でなすべき会話もどうしても素早く行うことができなかった。しかし、フリーアドレスで“壁”が低くなったことで、会話がしやすい雰囲気になり、たとえば、ひとつの資料を話し合いながら一緒に作り上げるといったことが可能となり、「顧客への提案資料を作成する時間が短くなっている」(同)。会話しやすい雰囲気にあることに加え、営業やSEは顧客プロジェクト単位で、あるいはグループ単位で座るということができるからだ。
レイアウトそのものも変えていい
同社の場合、コミュニケーションを増やすという点で、ある工夫が施されている。前述したように、4人がけのデスクが基本となっているが、このデスクは「わざと歩きにくいような間隔で配置してある」(小阪氏)。実際、デスクとデスクの間はまっすぐに歩けないように配置されている。この工夫で、デスクで作業中に困ったことがあれば、デスクのすぐ脇を通る人間を呼び止めて、相談することができるのである。

また、デスクの脇には補助イスが置かれており、通りかかった人間はいつでも補助イスでデスクの横に座れるのである。これもコミュニケーションを増やすための工夫のひとつだ。こうした工夫により、オフィスではいたるところで会話がなされている。取材中もオフィスの数カ所で、デスクの周りに数人が集まって立ちながら、あるいは座りながら打ち合わせしている風景が見られた。

同社の場合、さらに面白い工夫をしている。前述のようにデスクは4人がけが基本だが、床に固定されているわけではなく、自由に動かすことができる。だからデスクを2つくっつけて、8人で1つのデスクとすることもできる。プロジェクトの状況によっては、4人だけではなく、より多くの人間が1カ所に集中していた方がいいという判断もあるだろう。こうしたことから、同社のフリーアドレスでは、基本コンセプトとして「オフィスのレイアウトそのものも、自分たちで自由に変えていいということを宣言してある」(大石氏)という。