IBMとダッソーの「CATIA V5」で自動車の部品デザインを効率化した市光工業

山下竜大(編集部) 2006年06月23日 03時32分

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 すでに創業から100年以上の歴史を持ち、初代ダットサンにもランプを装着した市光工業。その後も日本初のプロジェクターヘッドランプや世界初の電動格納ミラー、次世代の光源として注目されるHIDヘッドランプなど、常に市場をリードする製品を開発。自動車用ランプで27%、ミラーで34%の国内シェアを実現している。

 自動車用ヘッドランプ市場において、この高い競争力を長期にわたり維持できる要因の一翼を担っているのが、同社が開発した“設計手順プログラム”である「設計ナビ」だ。設計ナビは、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)とダッソー・システムズ(ダッソー)が提供するPLMソリューション「CATIA V5」を活用することで実現されている。

 自動車用ヘッドランプは、自動車の“顔”を決める重要な部品のひとつであり、そのデザインにより、自動車の雰囲気を大きく変化させてしまう。そのために、最終的なデザインが確定するまでに、何度もデザインの変更が発生する。そのデザインの変更に、いかに迅速かつ正確に対応することができるかが、市光工業にとって大きな課題のひとつだった。

 また、デザイン変更に伴うモデリング作業は、以前は深い専門知識を持った専任の設計者が行っていたが、このような人材を育成するには時間が必要になる。そこで、経験の浅い設計担当者や外部から派遣されたオペレーターでも、深い専門知識や長期にわたる教育、専門の指導者を必要とすることなく使用できるツールを実現することも求められていた。

 このような課題を解決するために市光工業は、1980年ごろよりワイヤーフレームCADを導入することで頻繁に発生するデータの変更に対応してきた。その後、二次元CAD、三次元CADへとシステムを拡張することで、さらなるデザイン設計の効率化を実現してきたが、さらに納期の短縮が必要とされてきたことから、次なる施策が求められていた。

市光工業の二川氏 「技術も重要だが“人”のスキルをいかに向上していくかが鍵」と二川氏。

 市光工業の常務取締役、二川幸司氏は、「市光工業では、図面をドラフターで製図する時代から、二次元CAD、三次元CADへと、設計手法を進化させてきた。1990年代後半に入り、市場における競争が激化したことから、競合が新しいデザインの製品を発表すると、それに合わせてさらに迅速にモデルを変更できる仕組みを実現することが重要になってきた」と話す。

 そこで同社は、三次元CADのさらなる進化を目指し、日本IBMとダッソーが提供するエンジニアリングソリューションであるCATIA V5を中核とした設計ナビを構築する。

 設計ナビは、自動車用ヘッドランプを設計するときに、何を準備し、どのような工程で作業を進めれば効率的であるかを導き出すための設計手順プログラム。画面上に表示される対象の部品を選択し、プロセスフローから作業項目を選ぶことで、必要なデータベースやマニュアルなどにアクセスすることが可能になる。

 設計ナビが示す作業手順に従うことで、専門知識を持たない設計者や派遣されたばかりの外部オペレーターであっても、容易にデザインの変更などを行うことができる。これにより、たとえばレンズの構造検討で60%、詳細検討で40%、手配図30%の作業工数を削減。設計工程の時間短縮と効率化を可能にしている。

 二川氏は、「市場競争に打ち勝つためには、従来行っていた試作の行程を短縮することが不可欠になる。試作の行程さえなければ、3~5カ月は開発期間を短縮できる。そこで、この工程を三次元コンピュータグラフィックス(CG)によるシミュレーションで行うことで、効率化が可能。昨今の市場競争においてはモデル作成というものが非常に重要になる」と話している。

 今後、市光工業では、設計ナビの多機能化に向け、相手先形状や法規制データベースとの連携、進捗管理、各種シミュレーション機能との連携など、より一層の機能強化を目指していく計画だ。こうした機能強化により、設計作業の標準化を実現し、誰でも容易に行える環境を実現したいとしている。

 「今後の勝負の分かれ目は、技術革新はもちろん、人のスキルをいかに向上していくかが非常に重要になる。そのためのさまざまな試作を展開中であり、開発ナビも含めた設計の効率化をさらに推進していく計画だ」(二川氏)

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