ILMを実現するソフトウェア
ファイルサーバのILMを実現には、HSM(階層的ストレージ管理)ソフトウェアをWindowsやUNIXなどの汎用OS上で動作しているファイルサーバにインストールし実現する方法と、ポリシーエンジンと呼ばれるソフトウェアを使用して、ファイルサーバの外部から実現する方法の2種類があります。NASを使用する場合は、後者の手法を使います。
今回は、汎用OS上で稼動しているファイルサーバにHSM製品を組み合わせた場合の動作を説明します。HSM製品は、ファイルサーバ(一次ストレージ)のファイルシステムを直接管理して、そのファイルシステムに書き込まれたファイルを適切な二次ストレージに移動します。その動作は以下の通りです(図3)。
1. ファイルシステムに書き込まれたファイルの属性及び、設定されているポリシーに合わせて、指定された二次ストレージにファイルをマイグレーションします。そして、マイグレーションされたファイルへのポインタ(スタブファイルなど)を保持します。この時点では、一次及び二次ストレージの両方にファイルの実体が存在することになります。
2. 一次ストレージにファイルが書き込まれ、そのデータ量が上限(HWM: High Water Mark)に達すると、下限(LWM: Low Water Mark)までパージ(Purge)と呼ばれる動作で一次ストレージの容量を空けます。パージされた時点で、そのファイルの実体は二次ストレージのみに存在します。パージに関しても、ポリシー設定ができる製品もあります。
3. パージされたファイルへのアクセスがあった場合、HSM製品が二次ストレージからファイルを読み込み(Recall)、あたかも一次ストレージにファイルがあるかのように動作しますので、ユーザーからは従来どおりアクセスできます。このRecall時の動作として、一次ストレージ側にファイルを戻す方法と、戻さない方法を選択できる製品があるので、システムの要件によって、適切に設計することも可能です。
4. マイグレーションされたファイルの更新時には、一次ストレージ上に更新ファイルが作成されます。そして、マイグレーションポリシーに従って、再度二次ストレージにマイグレーションされます。一部のHSM製品がサポートしているバージョニング(Versioning)と呼ばれる複数の版を管理する機能を使うと、旧バージョンのファイルも二次ストレージに保存するので、一次ストレージのバックアップ運用と組み合わせて、使いやすいシステムを構築できます。
HSM製品によっては、複数の二次ストレージ(例えばCASとテープ装置)に同時にマイグレーションする機能を備えているので、二次ストレージのバックアップが不要になります。この機能を使うと、バックアップ運用は一次ストレージのみになり、確実・迅速なバックアップ運用ができます。また、削除機能を持っている製品では、情報の生成から削除までの情報ライフサイクル管理を行うことができます。
ILMを実現することによって、コストの削減のみではなく、「ビジネス活動の基盤である情報を、最適なパフォーマンスで、確実に保管し運用する」という命題を解決できます。