このように、ファイルにはアクセスされる時期とされない時期があります。しかし、今はアクセスされていないファイルも、今後アクセスされる可能性があるので削除できません。また、契約書や各種ログファイルなど、法律または社内規則などにより、一定期間変更や削除ができないファイルも存在します。
このように、いろいろな特性を持ったファイルを同じストレージに配置していると、データ量が少ないうちはあまり問題になりませんが、データ量が増えてくると以下の問題が発生します。
投資・運用コストの増加の問題
ストレージの容量増加、バックアップ用のテープなどの増加によるコストが増加します。また、所定のバックアップ時間内(バックアップウィンドウ)にバックアップが取得できないという運用上の問題が生じます。OA用途のファイルサーバ環境では、「約80%のデータが3カ月以上アクセスも更新もされていない」「同一内容の重複ファイルが多数存在する」という実態があり、更新されていないデータを毎回バックアップするのは無駄でしかありません。
解決策
作成後3カ月経過したファイルは、高速で高価な一次ストレージから、安価なディスクやテープなどの二次ストレージにマイグレーション(移動)する方法があります。これによって、一次ストレージには約20%のデータと、二次ストレージにマイグレーションされたファイルへのポインタ情報のみが残り、通常のバックアップ対象となる容量は約20%〜30%(ポインタ情報を含むため)まで減らすことができます。また、二次ストレージは、週単位もしくは月単位で行うマイグレーションの直後に一度バックアップすれば良いので、投資や運用コストを低減できます。二次ストレージにCAS装置を使用した場合、CASの持つシングルインスタンス機能により、重複ファイルを1つに統合できるので、さらに容量を節約できます。
法規制への対応の問題
契約書や電子メール、アクセスログなど、法律や社内規定などで、一定期間更新や削除ができないよう保管が義務付けられているファイルもあり、こうしたファイルを確実に保管する必要があります。
解決策
ファイルの更新・削除が禁止できる長期保存に適したWORM装置や、CAS装置に保存することにより、問題が解決します。
しかし、各ユーザーがファイルの保存先をその都度指定するのは煩雑であり、またファイルへのアクセス方法が変ると、実用的ではあません。そこで、ユーザーからのアクセス方法を変えることなく、ファイルの特性に応じて、特定の条件(マイグレーションポリシー:以降ポリシーと略す)の下で自動的に再配置し、ILMを実現する各種のソフトウェアがあります。