ここまでで、マネージャーがセクハラとも言える出来事を打ち明けられたうえに当面は会社に報告しないよう頼まれたというシナリオを提示した。そしてわれわれは読者の方々に、このシナリオについて考え、マネージャーがとるべき最善の行動をアドバイスしてくれるようお願いした。以下に、読者の方々からいただいた提案の一部を紹介したい。
- 「被害者」の希望に逆らっても、事件を彼女のマネージャーに報告する。
- 会話の内容を文書として残し、セクハラに及んだと言われている男性の行動に注意を払うようにするものの、頼まれない限りそれ以上の行動はとらない。
- 再び同じことが起こった場合に備えて、被害者に対して、起こったことを文書として残させる。
- 被害者の希望にかかわらず、事件を人事部門に報告する。彼女の意向は、報告書に自らの名前を含めるかどうか以外について考慮するべきではない。
- セクハラに及んだと言われている男性にコンタクトをとり、彼に自らの行為を認識させる。そのような行動は脅迫的であると誰もが認識できているわけではないからである。
読者の方々は、マネージャーは少なくとも事件を文書として残し、今後同様のことが起こる可能性を低くするべきであるという考えで一致している。しかし、事件を報告してほしくないという被害者の希望をどう扱うかについては、意見が分かれている。彼女の希望は尊重すべきであると考えている人々もいる一方で、概して個人の希望よりも会社にとって何が最善かを、ましてや今後被害者となるかもしれない他の人々を優先すべきであると考える人々もいる。
彼女のマネージャーは実際にどうしたのだろうか?彼はアドバイスを寄せてくれた大半の方々と同意であり、事件を人事部門に報告した。ただしその際に、被害者は現時点で事件の報告や、それについての対処をしてほしくないと希望していたという情報も一緒に伝えた。また彼は、マネージャーという立場上、このような行動をとる必要があったということを被害者に説明した。