NECとラックは12月21日、NECのデータマイニング技術とラックのセキュリティに関するノウハウを融合し、サーバへの攻撃を予測的に監視したり、コンピュータ上の不審行動を分析する技術を開発、その実証実験に成功したと発表した。
NEC インターネットシステム研究所 データマイニング技術センター長の山西健司氏は、セキュリティリスクの現状について、「外側からと内側からの両方の脅威が深刻になっている。外部からの脅威では、愉快犯から金銭目的の攻撃へと変わってきたほか、内部からの情報漏洩も増えている」と話す。またこうした現状に対する課題として、侵入検知システム(IDS)をすり抜けた攻撃に対する有効な防御法がないことや、情報犯罪の証跡を効率的に検出する方法がないことなどを挙げる。
NECでは、6年前よりデータマイニングをセキュリティに応用する取り組みを進めていた。今回の発表は、NECのデータマイニングエンジン「ChangeFinder」と「AccessTracer」を活用することで、攻撃の予測や不振行動分析の効率化を実現するというものだ。
ChangeFinderは、時系列データをリアルタイムに学習し、変化点スコアを算出することで、外部からの攻撃を予測する。山西氏は、「ネットワーク上の不整脈を観察しない限り、セキュリティ事故を防ぐことはできない。わずかな変化に気づくことが重要だ」と述べた上で、「従来のIDSでは、SQLインジェクション攻撃など特定のサイトに特化した攻撃を阻止できなかった。変化点検出エンジンのChangeFinderでは、アクセス量が変化した時点を検知し、攻撃の予兆を検出できる」と説明する。
実証実験では、実際に攻撃のあった3日間344万行のウェブアクセスログを約2分弱で解析し、「攻撃の予兆を100%検出できた」と山西氏。「変化点を発見するので、一見通常通信のようにみえる回避攻撃にも有効だ」としている。
一方、AccessTracerは、PCの操作履歴データなどから異常行動を検出し、これまで手動でログ分析していた作業を効率化する。山西氏は、「J-SOX法などではログ取得の重要性が叫ばれているが、ログを取得するだけでは安心できない。しかし、事件の手がかりを見つけるために膨大なログを分析するには非常に時間がかかる」と問題点を指摘する。AccessTracerでは、膨大なログの中から、例えばファイルをリネーム、圧縮し、メールに添付して送付、その後ファイルを削除するといった不審な行動を瞬時で検出する。
実証実験に使われた事例は、内部犯罪が起こった1万1000行に渡るWindowsのイベントログを7秒で処理し、異常と検知した上位1.5%の中にすべての不正行為が含まれていた。山西氏は「企業の自動的なコンプライアンス診断が実現する」としている。
ChangeFinderやAccessTracerは、すでにウイルスや障害検出のセキュリティソリューションとして提供されているが、NEC インターネットシステム研究所長の山之内徹氏は「今回実験した分野については、ラックと共同で実験を進めたこともあり、両社で連携できるサービスも検討したい」としている。事業化の時期は未定としながらも、山之内氏は「1年以内に実現したい」と述べた。