2007年は「サービス」時代の幕開け - (page 2)

徳田浩司(Fusion Reactor)

2007-01-01 08:00

コア技術だけでは不十分

 プロダクトのコア技術は成功の必要条件ではあるが、十分条件ではない。サービスの技術や品質を軽視するのは間違っている。現実的に、近年成功をもたらしているベンダーは、旧来のVCが見向きもしなかったような企業が少なくなく、自己資金で成長を果たした企業が多いのには大変驚いた。

 実際には、米国でもこのことを理解できていない人たちは少なくない。シリコンバレーのVCですら、古めかしい従来型の投資スタイルを今も踏襲し、投資先を探しているところがある。彼らは、古きよき時代が再び到来するのを心待ちにしている。アジアに強みを持つVCは、米国では投資機会が少ないとして、アジア地域に投資対象をシフトして成功したところがある。しかし、これは例外中の例外であり、海外にリレーションを持たない多くのVCは苦しんでいるのである。時代は元には戻らないと思われる。

簡単に真似できないサービスの技術と品質

 プロダクトが競争力をそれほどもたなくなっているのは、実はいくらでも真似ができるからだ。例えば、ライバル企業の技術者を採用することも方法のひとつだ。シリコンバレーはレイオフが頻繁で、いくらでも供給がある。バイオのように、物質の分子構造まで特定した特許なら特許戦略は有効だが、ITの世界では抜け道はいくらでもある。実際に、ITである分野の特許を調べたことがあるのだが、類似のものが多数成立していて非常に驚いた。特許はあっても、それほど役に立たないのである。むしろ事業化段階でどうビジネスをするかの勝負であり、プロダクトの技術そのものはすぐに陳腐化してしまうのである。

 逆に、サービスはそう簡単には真似できない。一見、サービスを保護するものは何もないし、すぐに誰でも真似ることができると勘違いする。しかし、特に問題解決能力を要求されるサービスほど、長い時間と経験(失敗も含めて)を必要とする。サービスを支える体制の構築や、人員の教育が必要なのだ。そのため、サービスの品質とそれを実現するマネジメントのノウハウは簡単に真似ができないのである。ある程度形ができ、水平展開できるまでには、相当の時間がかかる。創業して10年、20年を経過した企業はざらで、VCが敬遠してきた企業だ。しかし、こうしたサービス技術を持つ企業は、今後非常に大きな競争力を発揮すると思われる。これを短期間で整備するには、サービス技術をもつ企業を買収するしかない。

 しかし、さすがなもので、スタンフォード大学で国際間の技術力と競争力を研究している研究所では、すでにこの事実に気がついており、このことを指摘している。

サービス化はさらに進む

 さて、2007年の展開であるが、サービス化はさらに進んでいくと思われる。そして、次の展開として考えられるのはユーティリティモデルだ。クライアント側も、早期の問題解決を求めるため、ソリューションを資産として持つことにこだわらなくなり、例えばSaaS(Software as a Service)などがより進展してくるだろう。

 日本企業への教訓として言いたいことは、目先の売上拡大ではなく、サービスの品質にこだわることが必要だということだ。こうした努力を続ける企業は、近い将来、そして未来永劫も、成功する確率が高いと思われる。

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