土地をレンタルしてみよう
企業としてSecond Life内に支店を作る場合、島を買うのはリスクが高い場合もある。1島の価格が1675ドルで、月額費用が295ドル必要なためだ。まずテスト的に始めるのであれば、所有する島の区画を貸し出しているオーナーからレンタルすればよい。そして、例えばレンタルする土地が28平方メートルあたりで200前後のプリムを配置できるようになっている場合、その面積にどんな建物を何プリムで建てるか、という建築計画が重要になる。
そのためには、前回お話ししたプロジェクトプランニングをしっかりとする必要がある。クリエイターが店をちょっとずつ作るのであれば、別に計画などは必要ない。しかし、Second Life内の限られた土地に限られたプリム内で自社オフィスを作る場合、将来を見据えた上で、必要となる機能を仕様として盛り込んでおく必要がある。例えば、Adidasの靴は219ものプリムによって構成されているため、靴をひとつ配置しただけでほかのオブジェクトが配置できなくなってしまうということなのだ。
「どうしてもこの建物、オブジェクト、機能は必要だ」と決定し、残りのプリム数を計算した上で、そのプリム数で実現できるその他の機能を考えることになる。
テクスチャとデザインのかけひき
それでは、Second Lifeでのものづくりで大切なことは何か。それは「いかに少ないプリム数で、リアルでインパクトのあるオブジェクトが作れるか」ということだ。それを実現するのが「テクスチャ」といわれる物体の表面のイメージ画像である。
例えば、図2はシーネットネットワークスジャパンのSecond Lifeオフィス(Cyber Adventure 118, 30, 31)にある無料Tシャツのオブジェクトだが、その床に注目して欲しい。天井からはライトが床を照らしているように見えるが、実は床に貼っているテクスチャを細工してライトが当たっているように表現しているだけなのだ。この方法は随所に使われている。ちなみにオブジェクトのプリム数は、対象物を右クリックして「EDIT」を押せば、「General」タブの中に表記されている。
他にも、Second Life内のトヨタ自動車で販売している車や日産自動車が配布している車などは、テクスチャの使い方が絶妙で、見た目ほどのプリム数が使われていない。「これだけのプリム数でこんなにリアルに表現できるのか!」とびっくりするはずだ。ぜひ手に入れて、いろいろと見て欲しい。
ただ、デザインに関しては注意点がある。あくまでテクスチャで立体的な表現をするのは擬似的なものだ。ユーザーがいろんな方向から物体を見たときには当然、平面にテクスチャを貼っているだけなので、立体感はなくなる。つまりテクスチャの使い方はデザインとのバランスによって決定しなければならない。Adidasの靴は、立体感を重視し、「多くのプリム数を使ってでも立体的なデザインを実現したい」というデザイン優先の意図がみえる。
大槻透世二デジタルハリウッド大学院
次世代インターフェース研究室 研究員
Second Life研究室 研究員/プロデューサー
Linden社推薦 Second Lifeセミナー講師
サイバーアドベンチャーCEO
東北大学心理学専攻卒業。1年間のLA留学を経て、ソリッドレイ研究所でバーチャルリアリティのシステムインテグレーション、立体映像システム構築、HMDシステム構築などを経験。IT系コンサルティング会社を経て、デジタルハリウッド大学大学院コンテンツマネジメント修士課程修了(MCA)。その後、Linden Lab本社にてSecond Lifeカリキュラムのトレーニングを受ける。現在デジタルハリウッドにて「Second Life」セミナーを開催。また、バーチャルリアリティ、メタバース関連のシステム開発/プロデュースを行うサイバーアドベンチャーを設立し、そのCEO職に就いている。