今から4カ月前、オープンソースの仮想化ソフトウェア「KVM」の名前を聞いたことがある人はほとんどいなかっただろう。しかし、それも今は昔の話だ。
KVMは、隠密行動を取る新興企業Qumranetが後押しするオープンソースプロジェクトだ。そして、他の仮想化ソフトと一線を画す技術的、人的アプローチにより、早くも強力な支持者を獲得している。たとえばRed HatのようなLinux企業や、さらにはLinuxの生みの親であるLinus Torvalds氏といった面々だ。
こうした支援者の獲得は、画期的な仮想化技術を確立したいと考えるKVMにとっては最初の一歩にすぎないが、これだけでも、KVMがこの技術に与えうる影響の大きさを予感させる。仮想化技術とは、1つのマシンを複数のマシンのように扱える技術で、今やコンピュータ業界に大幅な変革を促す一大潮流となっている。
とは言うものの、そもそも仮想化技術には新しい選択肢が必要とされているのだろうか?現在、この分野で圧倒的な支配権を持つのはEMCの子会社であるVMwareだ。また、Microsoftも「Viridian」(開発コード名)というプロジェクトに取り組んでおり、あと1年ほどで発売される予定だ。さらに、KVMと同じくオープンソースの「Xen」が、すでに多くのオープンソース支持者の注目を集めている。KVMはこの市場に新たな選択肢と競争をもたらすが、同時に状況をさらに複雑にする存在とも言える。
「短期的に見れば、KVMは市場の混乱と開発者不足による質の低下を招き、痛みを引き起こすだろう」とIlluminataのアナリスト、Gordon Haff氏は話す。「しかし、もっと長い目で見れば、技術的な選択肢の幅が広がることは、Linuxおよびオープンソースにとって、どう考えても良い方向に作用するはずだ」
KVMとは、「カーネルベースの仮想マシン」(Kernel-based Virtual Machine)の頭文字を取ったもので、1台のコンピュータを複数の仮想マシンに分割するにあたり、Linuxベースの新しいメカニズムを採用している。仮想化には、ほかにも、よりハードウェアに近いレベルで機能するソフトウェア「ハイパーバイザ」を利用して同様の仮想化機能を実現するアプローチもあるが、KVMはこれとは異なる方式を使っている。
業界が先を争って仮想化技術を導入しているのには、いくつか理由がある。たとえば、非効率なサーバ群を仮想化で置き換えれば物理的なマシンの数が減らせる、安全なパーティションでソフトウェアをテストできるといったメリットがある。また、究極的には、コンピュータが数多く並べられたデータセンターを、刻一刻と変化する優先順位に対応させることも可能になる。
NovellやIBMといった業界の有力企業は、今はKVMの手腕を注視しているところだと話す。しかし、製品版Linux最大手のRed Hatで最高技術責任者(CTO)を務めるBrian Stevens氏は、KVMの将来性を確信しているという。
「現在のXenのレベルまで持って行くには1年はかかるだろう(中略)。だが、それは達成可能なはずだ。実際、(オープンソースプログラミングの)コミュニティーはXen以上に(KVMに)に引き寄せられつつある」(Stevens氏)