注目を集めるオープンソースの仮想化ソフトウェア「KVM」、その成功の可能性は?

文:Stephen Shankland(CNET News.com) 翻訳校正:緒方亮、長谷睦

2007-03-08 20:51

 今から4カ月前、オープンソースの仮想化ソフトウェア「KVM」の名前を聞いたことがある人はほとんどいなかっただろう。しかし、それも今は昔の話だ。

 KVMは、隠密行動を取る新興企業Qumranetが後押しするオープンソースプロジェクトだ。そして、他の仮想化ソフトと一線を画す技術的、人的アプローチにより、早くも強力な支持者を獲得している。たとえばRed HatのようなLinux企業や、さらにはLinuxの生みの親であるLinus Torvalds氏といった面々だ。

 こうした支援者の獲得は、画期的な仮想化技術を確立したいと考えるKVMにとっては最初の一歩にすぎないが、これだけでも、KVMがこの技術に与えうる影響の大きさを予感させる。仮想化技術とは、1つのマシンを複数のマシンのように扱える技術で、今やコンピュータ業界に大幅な変革を促す一大潮流となっている。

 とは言うものの、そもそも仮想化技術には新しい選択肢が必要とされているのだろうか?現在、この分野で圧倒的な支配権を持つのはEMCの子会社であるVMwareだ。また、Microsoftも「Viridian」(開発コード名)というプロジェクトに取り組んでおり、あと1年ほどで発売される予定だ。さらに、KVMと同じくオープンソースの「Xen」が、すでに多くのオープンソース支持者の注目を集めている。KVMはこの市場に新たな選択肢と競争をもたらすが、同時に状況をさらに複雑にする存在とも言える。

 「短期的に見れば、KVMは市場の混乱と開発者不足による質の低下を招き、痛みを引き起こすだろう」とIlluminataのアナリスト、Gordon Haff氏は話す。「しかし、もっと長い目で見れば、技術的な選択肢の幅が広がることは、Linuxおよびオープンソースにとって、どう考えても良い方向に作用するはずだ」

 KVMとは、「カーネルベースの仮想マシン」(Kernel-based Virtual Machine)の頭文字を取ったもので、1台のコンピュータを複数の仮想マシンに分割するにあたり、Linuxベースの新しいメカニズムを採用している。仮想化には、ほかにも、よりハードウェアに近いレベルで機能するソフトウェア「ハイパーバイザ」を利用して同様の仮想化機能を実現するアプローチもあるが、KVMはこれとは異なる方式を使っている。

 業界が先を争って仮想化技術を導入しているのには、いくつか理由がある。たとえば、非効率なサーバ群を仮想化で置き換えれば物理的なマシンの数が減らせる、安全なパーティションでソフトウェアをテストできるといったメリットがある。また、究極的には、コンピュータが数多く並べられたデータセンターを、刻一刻と変化する優先順位に対応させることも可能になる。

 NovellやIBMといった業界の有力企業は、今はKVMの手腕を注視しているところだと話す。しかし、製品版Linux最大手のRed Hatで最高技術責任者(CTO)を務めるBrian Stevens氏は、KVMの将来性を確信しているという。

 「現在のXenのレベルまで持って行くには1年はかかるだろう(中略)。だが、それは達成可能なはずだ。実際、(オープンソースプログラミングの)コミュニティーはXen以上に(KVMに)に引き寄せられつつある」(Stevens氏)

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

  4. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

  5. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]