レトロブームじゃないけれど
最近よく一昔前に流行った曲がテレビや街に流れているので、その頃を懐かしく思いつつ押入れからカセットテープを取り出す。擦り切れたテープから流れる思い出の曲を聴きながらふと思う。「このアルバムのCD買おうかなぁ」「それともダウンロードしようかなぁ」「もうテープって時代じゃないもんねぇ」。ちょっと待った。最後のその一言、それは本当に正しいのか。テープは本当に時代遅れなのか。
その答えは、ある世界ではYESだが、ある世界ではNOである。YESの世界は、ご存知の家電製品。確かに、DVDやメモリー型など次々と現れる新しいメディアと比較すると、テープは使い勝手が悪く敬遠されて当然だ。では、NOの世界はどこにあるのか。それは、日常生活ではとりたてて意識しない場所にある。そこでは、冬場のインフルエンザウィルスの如く、テープが猛威を振るって増殖中なのである。
銀行強盗が見たものは
「銀行強盗」なんてものが普段の日常生活で身近な方はそうはいないだろう。ここからは、そんなある銀行強盗の一味のお話だ。ある日、親分と2人の子分の銀行強盗は「万川集会銀行」に忍び込むことに成功し、今まさにお宝を手にすべく金庫の前にいた。
子分A: 親分、金庫には金の延べ棒がザックザックでっせ。
親分: おお。それを残さず戴いて、明日には高飛びだぜ。
そんなことを言いながら、見事な技で子分Aは金庫の扉を開けて見せた。扉を開けたら、そこには黄金色に光る金の延べ棒…… ではなく、色黒のプラスチックの塊がずらりと並んでいた。
子分B: お、親分。これは何なんすか? 金じゃないっすよ。
親分: こ、これはテープだ。なんでテープがこんなにいっぱい。
子分A: テープって、親分がよく演歌を聴いているやつですかい? それとも、姐さんに内緒でレンタルビデオ屋から借りてくるやつですかい?
親分: そんなんじゃねぇ。テープはテープだが、これはデータを入れておくテープだ。この中には、音楽でも、映画でもない、データが入っているんだ。
子分B: データって、なんのデータです? それが何で銀行の金庫なんかに???
子分の問いかけに、親分が説明を始めた。この親分、見かけによらず物知りなようである。