北京発--ここ北京にある清華大学の研究者が、セキュリティカメラで個人を識別できるアプリケーションを発明した。現在、既に深センと香港の間の通関手続きをスピードアップする目的で使われているという。
一方、Hewlett-Packard(HP)は、このアプリケーションを一般消費者向けPCに搭載して動画ファイルの検索に使用すべく、開発を進めている最中だ。
HP(本社:カリフォルニア州パロアルト)は現地時間5月31日、中国で最高レベルの理工系大学である清華大学に研究室を開設すると発表した。この施設は、HPが大学内に設置する初めての本格的な研究室となるが、当面は、音声、動画、写真を対象としたパターン照合技術と検索技術の開発に重点を置く予定だ。うまくいけば、HPはこの共同研究によって、プリンタ事業をPC事業の連携を高めたり、競合他社にはない機能を提供したりするようなアプリケーションを、HPのコンピュータに搭載できるようになる。
「この取り組みが必要なことははっきりしている。印刷は、印刷する内容があってのものだ。探しているものが見つけられなければ印刷などできない」と、HPで画像および印刷システム担当最高技術責任者(CTO)を務めるPatrick Scaglia氏は言う。
清華大学で作られた一連のアプリケーションには、たとえば、音楽ライブラリに含まれる歌のファイルを、リズムの特性、ジャンル、あるいはボーカルトラックから探し出す、といったものがある。ジャンルに「クラシック」と打ち込んで検索すると、ソフトウェアがハードディスク内にある交響曲のファイルを、ファイルに関連付けられたテキストタグではなく、そのトラック内の音自体を手がかりにして探し出す。
また、曲の一部を口ずさむことで歌のファイルを探し出せるアプリケーションもある。
さらに、清華大学は写真照合アプリケーションも開発している。人間の顔で検索を行うと、このアプリケーションは、写真に写っている人の顔の輪郭を検索し、ハードディスク内にある写真の中から検索結果に一致したファイルを表示する。清華大学の電子技術学部に所属する副研究員の方馳氏によると、このアプリケーションは中国国内のいくつかの警察機関で利用されているという。
このソフトウェアがHPのコンピュータに搭載されれば、家族が写っている写真を1枚クリックするだけで、その家族が写っている他の写真を検索できるようになるかもしれない。同じように、「誕生日」などの語句で検索するだけで、ハードディスクの中から大勢の人たちが風船に囲まれている写真のファイルをすべて見つけ出せるようになる可能性もある。また、理論上は、こうしたツールを使うことで、写真にタグを付けなくても写真共有サイトで写真を検索できるようになるはずだ。
メディア検索の技術を完成させようと奮闘しているのは、HPと清華大学だけではない。いつくかの米国企業も、同じようなツールの研究を続けている。写真検索サービスを提供するRiyaは、2006年に画像検索アプリケーションを公開している。動画の分野では、3VR Securityが動画検索ツールを発売しており、音楽の分野ではMelodis Corporationがメロディを口ずさむことによって音楽ファイルを検索できるツール「midomi」のベータ版を公開している。
清華大学のソフトウェアはまだ実験段階だが、完成度はかなり高いとScaglia氏は言う。現在はこの写真照合アプリケーションを使い、100万個のファイルを含むデータベースを対象にしたテストが続けられている。
「われわれは世界中で同様の技術を探したが、精華大学のソフトはこれまで見た中では最高の品質で、非常に魅力的だ。まだ研究段階にあり、(PCに搭載して)出荷できる状況にはないが、いずれ問題を解決できると自信を持っている」(Scaglia氏)
わたしがこの動画検索ツールを非公式に試してみたところでは、ある程度はうまく機能しているようだった。わたしは、自分の写っている画像ファイルをデータベース内に1件だけ加えてみた。すると、1台のセキュリティカメラが回り、3、4人のグループにまぎれた私を見つけ出し、認識した。しかし、わたしが眼鏡を外すと、このシステムはわたしを「データベースに該当なし」(不明な人物)に分類してしまった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ