IBMの不揮発性磁気メモリ開発、STT-RAMへと方針を転換

文:Michael Kanellos(CNET News.com) 翻訳校正:矢倉美登里、福岡洋一 2007年08月21日 08時46分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 IBMが、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)技術からTT-RAM(spin torque transfer RAM)技術に関心を移している。

 IBMは、ハードディスク用磁気記録コンポーネントを得意とするTDKと提携して、STT-RAMの開発を進めている。STT-RAMでは、微細な磁石に一定方向の電子スピンをもつ電流を流し、記録層の磁化の方向を変える。磁化の方向(上下、または左右)に応じて抵抗値が変わることから、抵抗値の大小に「1」または「0」を割り当ててデータを保存することができる。

 現在の計画では、IBMとTDKは65ナノメートルプロセスの試作品を4年以内に開発することになっている。

 シリコンバレーの新興企業、Grandisも、STT-RAMの製品化を目指している。Grandisは現在、既存の施設で潜在顧客向けのサンプルを製造中で、2008年後半には市場に出したい考えだ。

 IBMは以前、STT-RAMよりも従来型のメモリに近い磁気メモリ、MRAMの開発に取り組んでいたが、チップ上のトランジスタの縮小に苦労していた。

 「MRAMを小型化すると磁場を強めなければならず、また(データの)書き込みを続ける必要が生じ、実用的でなくなる。65ナノメートルから先へ進むには、情報を書き込むための新しいメカニズムを見つける必要がある」と、IBMの実験用不揮発性メモリ担当シニアマネージャー、Bill Gallagher氏は言う。

 65ナノメートルプロセスは現在、プロセッサの生産に採用されているが、それ以外のチップはたいてい、90ナノメートルや場合によっては130ナノメートルといった旧来のプロセスで生産されている(90ナノメートル、65ナノメートルという数字はチップの回路線幅の平均値を表す。1ナノメートルは10億分の1メートル。回路線幅が細いほど動作が速く、エネルギー効率が高まることが多い)。IBMはMRAMの試作品を製造したが、その際は旧来の製造プロセスを使用した。

 IBMはMRAMチップを製品化していない。Freescale SemiconductorはMRAMチップを製品化したが、最近になってMRAM技術の寿命について疑念を表明している。米国時間8月12日から14日まで開催された「フラッシュメモリサミット」で、FreescaleのDavid Bondurant氏は、MRAMは65ナノメートルを「超えられないかもしれない」と述べている。

 STT-RAMと相変化メモリ(phase-change memory)の2つが、将来製品化される可能性のある有力な不揮発性メモリだ、とGallagher氏は言う。STT-RAMが高速なのに対して、相変化メモリは高密度だ。

 STT-RAMは寿命の長さでも優位に立つ可能性がある、とGallagher氏は言う。相変化メモリでは、チップ上の微小なビットセルの温度が摂氏数百度まで上昇する。加熱することにより、結晶化した材料がアモルファス(非晶質)状態になる。表面が結晶状態かアモルファス状態かという違いに「1」と「0」を割り当てて、データを記録する仕組みだ。

 IntelとSTMicroelectronicsは、相変化メモリで広範囲に協力してきた。メモリ業界に詳しい関係者の中には、2社の合弁会社であるNumonyxが近いうちに、相変化メモリの製品化計画を発表すると考える人もいる(相変化メモリは1970年代からメモリ技術として話題になってきたが、いまだ製品化されていない)。

 主にサービス分野とサーバ分野で利益を上げているIBMが、なぜメモリに関心を示すのか?IBMはチップを生産し、知的所有権のライセンス供与も行っている。不揮発性メモリの開発は、自社で使用したり他社に提供したりするチップの生産にとって、欠かすことのできない要素なのだろう。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連キーワード
クラウド基盤

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
ハードから読み解くITトレンド放談
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
研究現場から見たAI
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
内製化とユーザー体験の関係
米ZDNet編集長Larryの独り言
今週の明言
「プロジェクトマネジメント」の解き方
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
Fintechの正体
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
情報通信技術の新しい使い方
三国大洋のスクラップブック
大河原克行のエンプラ徒然
コミュニケーション
情報系システム最適化
モバイル
通信のゆくえを追う
セキュリティ
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
セキュリティの論点
ネットワークセキュリティ
スペシャル
Gartner Symposium
企業決算
ソフトウェア開発パラダイムの進化
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
CSIRT座談会--バンダイナムコや大成建設、DeNAに聞く
創造的破壊を--次世代SIer座談会
「SD-WAN」の現在
展望2017
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
さとうなおきの「週刊Azureなう」
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
中国ビジネス四方山話
より賢く活用するためのOSS最新動向
「Windows 10」法人導入の手引き
Windows Server 2003サポート終了へ秒読み
米株式動向
実践ビッグデータ
日本株展望
ベトナムでビジネス
アジアのIT
10の事情
エンタープライズトレンド
クラウドと仮想化