最新のテクノロジに敏感でVoIPのアーリーアダプターとなった人々は、テクノロジが過去10年間でどれほど進歩したかを最もよく理解しているはずだ。サービス開始当初のVoIP電話は、信頼性や品質が不確かな、とても基本的な(しかし安価な)ものだった。しかし今では、一般的な固定電話よりもずっと多くの機能をより安価に提供しているうえに、多くのユーザーにとって固定電話サービスを解約するに十分なほどの高い信頼性も確保している。
VoIPユーザーは、発信者番号表示や通話中着信、三者通話などの一般的な固定電話機能に加えて、ボイスメッセージを電子メールとして受信するといった機能を利用できて当然だと思っている。また、VoIP電話では、固定電話であれば追加料金を支払う必要のある多くの機能を基本料金で利用できる。
とはいえ、さらに多くを望むのが人間の性であり、VoIPプロバイダーが提供してくれたらいいなとユーザーの多くが願う追加機能が1つはある。そういう機能の中には、一部の(残念ながらすべてではない)VoIPプロバイダーがすでに提供中のものもある。一方、現時点では夢でしかないものもある。私の知り合いのVoIPユーザーを対象として非公式な調査を行ったところ、誰にとってもはずせない項目から成るウィッシュリストが出来上がった。
無線機器や携帯電話との統合
自宅でVoIPサービスを利用している人々の大半は、外出時にも電話を利用できるよう、携帯電話サービスにも加入している。ここ20年の間に、携帯電話はほぼどこでも見かけるものとなり、お金持ちの贅沢品ではなくなった。今では、若者にとって「必須アイテム」となり、電話嫌いのお年寄りでさえ持っているぐらい、誰にとっても必需品と言ってもよい物になっている。
しかし、携帯電話サービスは固定電話とVoIPサービスのいずれと比べても格段に料金が高いということは見過ごせない。特に、電話を利用する頻度が高かったり、国際電話をかけたりする場合にはそれが顕著である。例えば、Verizon Wirelessは国際電話をときどきかける人向けに「190カ国以上の国に対して、料金は1分当たり49セントから」と宣伝している。
しかし、この49セントはメキシコに電話をかける場合の料金であり、フランスやイタリアにかける場合は1分当たり1ドル49セントとなる。高い!この料金はもちろん、携帯電話サービスの40〜60ドルという月額料金とは別に支払う必要がある(月額料金に含まれている「無料通話時間」がどれだけあるかによる)。1分当たり1ドル49セントという料金は、オーストラリアやシンガポールなど、他の一般的な国々にもあてはまる。
一方、私が加入しているLingoのVoIPプランの月額料金は21.95ドルである。そして、この料金で米国内だけではなく、カナダや西欧州(イタリア、フランス、ドイツ、英国、スカンジナビア諸国)、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、韓国への通話が無制限となっている。
ちょうど今日、Lingo Customer Careからと称して私に送られてきた電子メール広告によれば、「Lingo Unwired」という新サービスを利用すれば、携帯電話のプロバイダーを「迂回する」ことで国際電話料金を大幅に節約できるという。事実、電話をかける場所や時間に関係なく、「すべての」国際通話が最初の10分間無料であり、その後は1分間当たり10セントを支払うだけでよいという。この広告によると、同サービスを利用するには、利用している携帯電話番号をLingoに登録するだけでよいという。
この広告がLingoのものであるどうかについては、同社からの回答を待っているところだ。電子メール中のリンクがlingo.comではなくapp.bronto.comというドメインを指していたうえに、Googleで検索してもこの新サービスについての情報は何も見つからなかったため、私はちょっとした疑いを抱いたのだった。
もしこの新サービスが本物なのであれば、これこそわれわれの多くが待ち望んでいたものである。そして実際、Lingoのメインウェブサイトに掲載されている小さな広告には、Lingo Unwiredが「近日サービスを開始する」と書かれている。そのため、この特定の電子メールメッセージが本物かどうかはさておき、Lingoがそれに類するサービス(携帯電話キャリアは眉をひそめるだろう)に取り組んでいるらしいということは言える。
このサービスがどのような料金で提供されるにしても、高額な携帯電話サービスではなく安価なVoIPサービスを利用した通話が多ければ多いほど、私はハッピーになれる。携帯電話サービスとVoIPサービスを統合する1つの方法は、ユーザーが保有している電話すべてを同時に鳴らす高度な通話転送サービスを利用することである。そうすることで、例えば在宅中に携帯電話に電話がかかってきた場合に、VoIPの回線を使ってその電話に出ることで、それを携帯電話の通話としなくても済むようになる。
長距離無線を用いたVoIP
理想を言えばもちろん、携帯電話の利用を完全にやめて、どこでもVoIP電話を利用できるようになることが望ましい。これが現実となるためには、無線インターネットの利用できる範囲が広がる必要がある。
いくつかの都市では既に市内全域にWi-Fi網が張り巡らされつつあり、無線インターネットのエリアを拡大することでこういったことを可能にするWiMaxといった新しいテクノロジも存在する。こういったネットワークに接続できる、携帯可能な電話が安価に入手できるようになり、それを安価なVoIPプランで利用できるようになれば、VoIP電話はどこでも利用可能になるだろう。
これは確かに、少なくとも都市部では実現可能だ。ただし、地方に頻繁に出かける人にとっては、携帯電話を捨てられる日はそう早く訪れないかもしれない。
VoIP 2.0の機能
専門家の予測によれば、近い将来、1つの電話番号に電話をかけるだけで特定のグループに属する相手と即座に会議通話を行えるといった機能が広く提供されるようになるという。これはビジネス向けの機能として、特に遠隔地間で行われるビジネスが増えるにつれて、とても有用なものとなるはずだ。
また、VoIP電話を用いたビデオ会議を組み合わせることで、柔軟性もさらに増すことになる。小さなビデオ画面と極めて小さな組み込みカメラのついたVoIP電話機を用いることで、フルサイズのコンピュータやノートPCを使用せずともビデオ会議を行えるようになるのである。
盤石の信頼性
とは言うものの、多くのVoIPユーザーのウィッシュリストにおける最も基本的な項目は、さらに高い信頼性である。VoIPの信頼性はずいぶんと向上したということを認める一方で、その信頼性はまだ固定電話サービスを解約できるまでには至っていないというユーザーもいる。
ほぼVoIPに満足しているというあるユーザーが私に語ったところによると、彼は通話の90%に対してVoIPを利用できるが、ワシントン州のレドモンド地域との間の通話(Microsoftとの通話も含め、複数の相手との通話)ではまだサービスが完璧ではない(エコーやパケットの欠落、一般的に低い音声品質という問題が発生する)場合があるという。また、VoIP回線から携帯電話への通話で時折問題が発生すると言う人々もいる。こういった問題が解消されるまでは、素晴らしい新機能が導入されても、VoIPがすべての家庭および企業でPSTNに取って代わることはないはずだ。