とはいえ、Oracle FinancialやMicrosoft Officeといったアプリケーションを一夜にして止め、On Demandに移行するということはないでしょう。Gartnerは、2011年にSaaSが25%を占めると予測しています。金融機関もよく利用しているTriple Treeという調査会社は、その数字を40%と予測しています。どうなるかを予測するのは難しいですが、市場が急激に拡大することだけは確実です。
ちなみに、GartnerはCRMでは2009年までに50%がSaaSになると言っています。そうであるならば、その時点でOn Demand CRMの領域で25%以上のシェアを獲得しているべきだと考えています。ERPやSCMはOn Demandにあまり向いてはいないかもしれませんが、CRMはOn Demand向きです。人事(HR)アプリケーションもそうでしょう。HRは5年後には75%くらいがOn Demandになるかもしれません。講演で紹介したElectronic Artsの事例も、人材採用のアプリケーションです。Morgan Stanleyでも、Salesforce.comをHR用途で利用しています。
HRで有名だった米PeopleSoftは現在Oracleに買収されましたが、その創業者だったDave Duffield氏がWorkdayという新しい会社を興し、PeopleSoftで実現していたアプリケーションをすべてOn Demandで実現しようとしています。WorkdayのアプリケーションがAppExchangeになるという発表はしていませんが、これはSalesforce.comともよく適合するものとなっています。
――2006年発表したインキュベーションセンターの状況を教えてください。
米国では非常に関心が高く、スペースが足りなくなるほど参加がある状況です。これには、パートナー企業も高い関心をもっています。成果も、AppExchangeのかたちでいくつか出てきています。日本についてもやることは確かなのですが、現状は場所を探している状況です。日本は不動産物件が高いと聞いていますので、そのあたりで苦労しているのだと思います。
――SaaSを拡大解釈しているともいえる状況があり、どの企業も自社のサービスをSaaSだと言っています。そのため、多少混乱することがありますが、業界リーダーのSalesforce.comの定義するSaaSの条件を教えてください。
3つあります。1つはマルチテナントなサービスであることです。2つ目がサブスクライブ方式で、利用した分だけの費用を払う従量課金制度であること。そして3つ目は、実際にログインされて活用されているサービスだということです。3つ目の条件は、実は半分冗談です。名前こそ出しませんが、ユーザー数の数え方がかなりいい加減なベンダーもありますので。Salesforce.comではアクティブユーザーしかユーザーとして数えていません。
――カスタマイズ性はSaaSの条件に入りませか。
CRMにおいては、カスタマイズ性は重要でしょう。それは企業ごとにCRMの仕組みが異なるからです。しかし、例えばメールであれば、1人の会社でも100万人の会社でもあまり変わるものではありません。Gmailはシンプルな構造ですが、十分に機能しています。つまり、カスタマイズ性は絶対条件ではありません。