ZDNet Japanの読者なら、IT関連の資格を複数保有している人も数多いことだろう。編集部内で「何か資格持ってますか?」と聞いてみると、なんとたまたま声をかけた2名が2名とも初級システムアドミニストレータ(初級シスアド)の資格を持っていた。さすが人気の国家試験だけのことはある。
「IT業界で仕事をしていれば、そんなに難しい試験じゃないですよ」と、その資格保持者は言うが、初級シスアドの合格率は30%以下。情報処理推進機構(IPA)のサイト上にある過去問題を見る限り、筆者が合格を目指すとなるとかなりの勉強が必要だということがわかった……
「資格なんてたいして役に立たない」と言う人も多いが、日本人は資格が好きである。「履歴書の資格欄に運転免許しか書ける資格がないのもねぇ」とぼやく人や、「TOEICで800点を取らないとリストラされる」と焦る外資系企業の社員など、資格に振り回されている人もいる。そういえば筆者は、IT業界に長年身を置いているにも関わらず、IT系の資格は1つとして持っていない。そして、機会があれば初級シスアド取得を目指して勉強してみたい、と考えたこともあった。
とはいえ、初級シスアドはすでに新試験へと移行することが発表されており、今資格の勉強を始めるにはタイミングが悪い。そんな時、マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 マイクロソフトラーニング部 シニアマーケティングスペシャリストの篠木隆一郎氏と出会い、MOS(Microsoft Office Specialist)という資格を知った。
MOSは、Microsoft WordやExcel、PowerPointなどのOfficeアプリケーションの基本知識や操作能力を判定する試験。「一般ユーザーを対象としたPC資格では日本最大規模」(篠木氏)というこの試験は、1998年の試験開始以来、累計受験者数が日本国内で200万人に達している。大学などでMOS対策講座を設置し、学生に必須スキルとして受験を促すケースや、企業が内定者に向けて試験を実施し、教育の一環とするケースもあるという。
MOSは実際にPCを使って操作ログを記録する実技試験なので、実用性の高い試験といえる。筆者も、「Excelの一番上の列を固定させたいんだけどなぁ」「セルの中でリターンを押して1つのセルに2行の文章を入れたいんだけどなぁ」といったように、「こうしたいのにできない!」と、もどかしい思いをすることが多い。そんな時、MOS資格保持者が隣にいたら…… ではなく、そんな時、MOSの勉強をしておけば、「列の固定は『ウィンドウ → ウィンドウ枠固定』で、セルの中のリターンは『Altキー + リターンキー』でOK!」と、ラクラク操作できるだろう(実は、この2つの機能をいつも忘れてしまう筆者は今、先日作成したカンニングメモを参照しつつこの原稿を書いている)。
しかも、2007 Office systemを使ったバージョンで試験を受けて合格すれば、Microsoft会長のBill Gates氏のサインが入った合格認定書がもらえるのだ。Gates氏ファンにとってはうれしい特典だ。
とはいえ、実は記者という仕事は、あまりOffice系アプリケーションを利用する機会が多くない。Excelだと、先ほど例に挙げたウィンドウ枠の固定やセル中リターン以上の複雑な機能は使った覚えがないほどだ。一般的には実用性の高い資格でも、筆者にとっては宝の持ち腐れとなりかねない。
かといって、エンジニア向けのMCP(マイクロソフト認定プロフェッショナル)は、筆者にはハードルが高すぎる。そこで篠木氏が薦めてくれたのは、MCA(マイクロソフト認定アソシエイト)だ。MCAは、データベース、アプリケーション、プラットフォーム、セキュリティの4分野に分かれており、それぞれの概要を問う試験だという。例えば、「プログラミングについての試験も、プログラムを実際に書くことはなく、プログラミング言語にはどのような種類があって、その特長は何かを問う」(篠木氏)といった内容だそうだ。
なるほど。それなら技術者レベルの知識がなくても勉強すれば何とかなるかもしれない。恥ずかしながら上記の問いに答える能力は現在の筆者には備わっていないが、使う機会の少ないOfficeアプリケーションの資格を取るよりは、MCAの勉強をした方が原稿執筆にも役立ちそうだ。
こうして資格好き日本人の一員である筆者も、新たな資格に興味を持ち始めた。ちなみに、累計受験者数200万人を突破したというMOSは、全世界での受験者数が約450万。つまり、半数近くの受験者が日本人ということになる。やはり日本人は資格がお好きということか。