勝者と敗者を明確にするところに真の価値がある--Enterprise 2.0 SUMMITレポート - (page 2)

富永康信(ロビンソン)

2008-04-25 08:56

 McAfee氏は、ソーシャルソフトウェアの価値は、企業によってどうのように使われ、競争力や対応力、効率性を伸ばすかを示すものであり、ソフトウェアの開発方法や実装方法、あるいは統合のされ方を問うものではないとする。

「これこそ、企業が新しく持つべき形であり、新しいアプローチを実現するためのツールといえる」(McAfee氏)

「いくら儲かるか」を考えるのは意味のないこと

 また同氏は、ITには「不可能を可能にする」という有益な面と、その価値は「自動的に得られるものではない」という2つの特性があり、Enterprise 2.0にもこの特性が存在するとする。そのため、企業にとって価値のあるものを提供する可能性を持っている半面、この技術を取り入れて活用するのは困難を伴うとも語っている。

 Enterprise 2.0の特性を理解し、その適用に長けている企業は、既に競合優位性が備わっていることになる。例えば、顧客やサプライヤーとの重要なリレーションを開発し、それを維持するための行動を迅速に行うができるのである。

 McAfee氏によれば、ビジネスの世界においてITが当たり前のものになるに従い、従来のITは企業間の差別化の要因とはならず、むしろ「類似化」を進めるものになっているという。Enterprise 2.0の本当の価値は、画一化されたITパッケージや運用方法によって類似化が進む企業間の競争に影響を与え、勝者と敗者を明確に分けるところにこそあるとする。

 そのため、同氏はEnterprise 2.0を導入することで「いくら儲かるのか」を考えるのはあまり意味のないことだとする。ビジネスの可能性や将来性、それによって得られるだろう有益性に着目すべきであり、対処の早さ、革新、コラボレーションといったものの価値を定量化することはできないのだという。

導入の成功と不成功を分ける3つの要因

 では、Enterprise 2.0の導入を成功させるためには何が重要なのか。McAfee氏は成功と不成功を分ける3つの要因を示している。

 その1つは、技術的要因、テクノロジーへの展開の方法だ。Enterprise 2.0の技術にはさまざまな種類があるが、成功事例につながるのはシンプルで使いやすく、ウェブライクな機能を持つことが大前提となる。ただし、既にある技術を新しい技術に置き換えようとしたとき、人々が持っている比較基準は公平ではなくなるので注意が必要だという。これをMcAfee氏は、「9X Problem」と呼んでいる。

 9X Problemとは、既にあるツールと新しいツールを比較する場合、すでに使い慣れたものは3倍高く評価され、新たなものは3分の1程度の価値でしか評価されないという問題のこと。新しく置き換えようとしているものは、既に存在するものよりも「9倍以上」良いものでないと、マーケットでは上手く受け入れられないのだという。

 つまり、Enterprise 2.0を展開するためのツールを導入しても、それが旧来の電子メールなどよりも「9倍」使いやすいものでなければ、なかなか移行は進まないということになる。実際に、そうした事例は多いとMcAfee氏は指摘する。

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