勝者と敗者を明確にするところに真の価値がある--Enterprise 2.0 SUMMITレポート - (page 3)

富永康信(ロビンソン) 2008年04月25日 08時56分

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 要因の2つ目が、経営やそのイニシアチブへのサポートである。もしEnterprise 2.0の利活用にインセンティブがあるのなら、前述の9X Problemは比較的容易に解決できる。人々は、使ってみてその良さがはっきり実感できれば、その新しい技術を使い続けるからだ。では、人々に使ってもらうきっかけ自体は、どのように作ればいいのだろうか。

 インセンティブは2つに分類される。「ハード」と「ソフト」である。ハードとは、つまり金銭的なものなどを含む目に見える報奨だ。もうひとつの「ソフト」は、他者から認められたり評価を得たりする、いわゆる「形のない報奨」である。Enterprise 2.0の展開にインセンティブは重要だと考えるMcAfee氏は、形のあるものよりも、ないものの方が有効だとする。Enterprise 2.0の推進者や管理者は、新しい技術を歓迎し、組織にとって有効であることを示すとともに、社員に参加を促し、確かに報奨が得られることをきちんと伝えることが求められる。

「効果的な方法は、既存のシステムでのコラボレーションには問題があったことを明確に示すこと。例えば、社内の専門家を探すのが難しいとか、誰がどんな仕事をしているのか把握できないといった問題を示した上で、Enterprise 2.0の技術がこれらの問題を解決してくれると説明する。そうした努力を続けることが良い結果を生む」(McAfee氏)

 そして3つ目の要因は「企業の文化」である。まず前提として、社員が信頼されていることが重要だ。McAfee氏の経験によると、社員に対する信頼度が高い現場ほど、Enterprise 2.0の技術がフィットしやすいという。また、助け合いの文化やマネジメントによる平等主義へのサポート、情報共有に対する強いニーズ、さらには若い人たちの文化なども条件に加える。

 これから大学を卒業する若い世代にとって、電子メールはもはや古い技術であり、Web 2.0的システムこそ慣れ親しんだ技術という位置づけになっている。Enterprise 2.0を導入するプロジェクトには若手に参加してもらうことで裾野が広がり、普及に向けた最初の壁をクリアできる可能性が高くなるという。

「日本でのEnterprise 2.0の成功は私の願い」

 一方、McAfee氏が研究している新しいソーシャルソフトウェアプラットフォームは、企業内のみならず、取引先や顧客、パートナー企業など、場所を問わず参加して欲しい人を好きなだけ招き入れることができる機能を持っているという。「取引先、顧客、パートナー企業と、長期かつ親密につながっている日本企業にとって、このような技術が非常に貢献できると思う」と同氏は語る。

 また、インタビュアーであるLloyd氏からの「日本企業は質の高いマネジメント理論やマネジメント術を持っていると海外から評価されているが、Enterprise 2.0の技術は既に確立されつつある彼らの手法を、更に向上させられると思うか」という質問に対し、同氏は次のように答えた。

「技術革新や総合的な品質管理の理論は日本企業において理解され成功している。今後、Enterprise 2.0の成功を世界のどこで実現したいかといえば、その観点から日本人や日本企業が最も受け入れられやすい環境にあるのではないかと考えている」(McAfee氏氏)

Enterprise 2.0にとってチャレンジの時代

179 インタビュアー役を務めたGregory Lloyd氏は、トークセッションでMcAfee氏のメッセージを総括した。

 インタビュー終盤、Lloyd氏からの、「アクセス権限、セキュリティ、コラボレーションなど、今後複雑化を増し、変化していく技術が、Enterprise 2.0をどのように支えていくと思うか」という問いに対し、McAfee氏は「難しい挑戦になる」と語った。一方で、同時に「門や壁、ハードルを作りすぎることは良くないことだ」とも言う。McAfee氏は、Enterprise 2.0の導入が原因で、企業に新たに発生するリスク要因はないという立場をとる。そうしたリスクについては、Enterprise 2.0の導入とは無関係に、企業が考慮すべきことである。

「ひとつ、私が心配しているのは、管理を強化することによってEnterprise 2.0の環境をユーザー本位で考えなくなることだ。簡単に使えることを前提に設計されなくなれば、再び人々は過去に戻り、不自由な電子メールを使い続けざるを得ない状況になってしまう。だからこそ、エンタープライズの世界で成功を収めるためには、常にユーザーを中心に考えていく必要があるだろう」(McAfee氏)

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