JavaScriptの高速化、メモリ管理の改善
バックエンドの改良としては、JavaScriptエンジンの高速化が挙げられる。Gmailでのメッセージ表示では60msを記録しており、「100msかからないということは、ユーザーにとっては瞬時のこと。非常に重要な数値」(中野氏)と強調している。
また、HTML5のオフラインブラウズへの対応も大きな特徴だ。ウェブアプリケーション側で対応していると、オフラインになってもブラウザで作業を継続することができる。オフライン時に更新されたメールなどのデータはローカルに保存され、オンラインになるとウェブアプリケーションとデータを同期するしくみだ。
ウェブアプリケーションのオフライン化は、GoogleがGoogle Gearsで取り組んでいる。機能として競合してしまうが、Mozilla Japan マーケティング部 テクニカルマーケティング担当の浅井智也氏は、その後のインタビューで「オープンスタンダードへの準拠」を強調している(中野・浅井両氏のインタビューは、Firefox 3がリリースされる6月18日に掲載予定)。
Firefox 3が起爆剤になる日
Firefox 3はインターネットのヘビーユーザーや開発者だけでなく、「ブラウザを選択できる」ことを知らないビギナー層にも訴求する新ブラウザとなる。
現在、JR山手線の車両内に取り付けられた液晶ビジョンでは、Firefox 3をPRするディスプレイ広告が展開されている。今週月曜から始まったこの取り組みは今週1週間続くという。
Mozilla Japan 代表理事の瀧田佐登子氏は、「Mozillaのゴールはただ製品をリリースすることではない」と訴える。「Mozillaは製品という形でメッセージを伝える」というのだ。
2004年にリリースされたFirefox 1.0では「インターネットの世界に、ブラウザの選択肢と技術の革新を示したかった。独占市場だったブラウザの世界を元に取り戻そうという思い」だった。2006年のFirefox 2.0では「SNS、ブログ、RSSといった新たなサービスの能性を示唆した」。
瀧田氏は「ブラウザ(Firefox)がリリースされるたびに、ユーザーのライフスタイルも変えてきた」と2つのバージョンを振り返る。そしてFirefox 3では、「ウェブアプリケーションの普及の加速」と、「アプリケーションプラットフォームの新基盤」としてのFirefoxを前面に押し出す。
製品としてのメッセージに加え、Mozilla Japanの活動も変わる。これまでのマーケティング活動と日本語版製品のリリースだけでなく、「ユーザーとエンジニアを結びつけるような中間のミッションと、Mozillaのオープンソースのテクノロジーを日本のものづくりに役立てるようなポジション」(瀧田氏)を考えているようだ。
Firefox 3は今回、国産暗号化技術「Camellia」を搭載する。Camelliaはオープンソース化を積極的に実施しており、基本特許が無償化された暗号化技術だ。DES暗号を初めて解読した三菱電機情報技術総合研究所の松井充氏や、NTT情報流通プラットフォーム研究所の神田雅透氏などが参加、NTTと三菱電機が共同で開発した。
神田氏は「暗号は使われてなんぼ」とざっくばらんに語る。続けて「暗号は目立ってもしょうがないので、意識しないで使って頂きたい」と述べ、「それが我々のモチベーションなのだ」と語っている。瀧田氏も「日本の技術をFirefox 3に取り入れてリリースする。これは初の試み」と、その意義を強調している。
瀧田氏は「ウェブの世界も今、技術の中間地点にいる。ここから新しい世界が始まる。Firefox 3がその起爆剤となり、新しい時代を切りひらきたい」と、いよいよ迫った正式版リリースを前に意欲を見せた。