コストと期間の“二重苦”
そのフランスベッドメディカルサービスは今回、仮想化によるサーバ統合を行った。結果的には見事なサクセスストーリーとなるのだが、そのきっかけとなったのは、メーカーによるサーバのハードウェア保守の打ち切り通告だった。
同社はTISのデータセンターに23台のIAサーバを設置、運用をTISにアウトソーシングしていたが、そのうちの1Uサーバ16台(日本HP製)が2008年3月に保守契約が切れる。そのことが2007年5月に判明している。
情報システムでのハードウェア保守契約は付き物だ。しかしそれは、一般のモノづくりの世界ではなかなか理解されない話でもある。同社の場合もそうだった。
「今あるものから新しいものを再構築する、その費用感といったら、とてもじゃないけど会社の上層部からは許してもらえないようなものでした。それをなんとか下げる方法を考えた結論が仮想化だったのです。仮想化がいいからということより、コストをなんとか抑えるにはこの方法しかなかったのです」(森氏)
当初、同社の経営トップ層には、サーバのハードウェア保守が切れるということが理解されなかったという。フランスベッドはメーカーであり、製品は買ったら一生使えるというのが常識。まして国内のモノづくりは、製品保証に対する考え方は強い。そこで、単に「保守契約が切れたから新しいものに買い換えます」というのではなく、移行コストを極力抑えることが至上命題として降りてきた。
そして、もうひとつの命題として降りてきたのが移行期間だ。問題が判明したのは2007年5月。2008年3月に保守契約が切れるという、その日まで1年を切っていた。
同社の決算のタイミングもこの問題を大きくした。同社は4~9月と10~3月の半期ごとで予算計上を行うため、2007年5月に契約切れが分かっても10月からしか着手できない。
「稟議にはとても上げられない数字でしたので、結局10月からやるしかないわけです。保守が切れるのは2008年3月でも、リースが切れるのはさらにその前の2008年1月ということも分かりました。当然、延長するのはもったいないということで、結局移行期間は10月から1月までの4カ月しかないということになったのです」(池田氏)
コストの厳しさに、移行期間の厳しさがかぶさってきた。つまり、ハードウェアを手当てし、OSをインストールし、アプリケーションを導入するという通常の手順を踏んでいくことは厳しいということになった。どうするか――。