当初はRed Hat LinuxもVMware上への移行を検討したが、実際にはRed Hat Linuxの移行は断念している。これは「VMwareの仕様上、(企業向けの)Red Hat Enterprise Linuxにしなくてはならず、その点で無償から有償になるのは、Linuxでサーバを持つメリットが薄くなってしまう」(池田氏)と考慮したからだ。
このLinuxサーバに実装されていたのが、ウェブサーバとメールサーバ、そしてメールのウイルスチェックサーバの3つ。メールについては、「迷惑メール(スパム)対策に手を焼いていて、自前でメールサービスを持つことに疑問を抱いていた」(池田氏)という。そこで、外部のレンタルサーバでウェブとメール、スパム対策を実装しているサービスを利用するに至っている。
こうした経緯からフランスベッドメディカルサービスでは、VMwareへの移行はWindows 2000のみで進めている。このことについて池田氏は「OSが単一であった方が設計を考えやすいというのも盛り込んだうえで、OSを絞り込んだ」と説明している。同社のサーバ仮想化が成功しているのは、こうした選択があったからでもある。
同社の仮想化によるサーバ統合が成功した要因はほかにもある。システム移行というプロジェクトにおいては、情報システムの内部をどれだけ把握しているかが重要なポイントになる。
同社の場合、2003年にTISがシステムを開発している。つまり、TISがシステムの内部を把握していることになる。そのTISが移行作業を担当するわけだから、その点では問題なく進んでいくはずだ。しかし、池田氏は「設計書にすべての設定が網羅しきれているのかどうか言い切れる状態ではなかった」と振り返っている。
「Windowsの怖さとしてGUIで設定が手軽にできる。しかし、UNIX系OSのように設定ファイルを抜き出すことができない。それだけに、手作業で移行してしまうと設定の抜け漏れが発生してしまう可能性があった」(池田氏)
そうした事態を考慮して今回のケースでは、サードパーティーの移行ツールを採用している。
今回のケースで同社が、オープンソースの仮想化ソフト「Xen」ではなく、有償のVMwareを採用しているのは、こうしたサードパーティー製品が充実しているというのも理由の一つであるという。
ここまで見て分かるように、同社の仮想化によるサーバ統合が成功しているのは、システム移行というプロジェクトにおいて発生しうるリスクを見据えたうえで、それぞれのリスクに対策を講じていったという積み重ねがあるからだ。