米国シアトルにて開催されたMicrosoft主催の「2008 School of the Future World Summit」。このイベントは、学校教育の未来を考えるイベントだ。今回が4回目となるこのイベントがはじまったきっかけは、米国フィラデルフィア市が新しく公立高校を作る際、Microsoftにどのような学校を作るべきか相談したことから始まった。
営利企業であるMicrosoftにフィラデルフィアが相談を持ちかけた理由は何だったのか。それは、フィラデルフィアが学校にテクノロジを取り入れたかったことはもちろんのこと、Microsoftが実践する同社内での効率的な空間の使い方や環境に配慮した企業運営、社員の専門的能力を引き出す方法など、企業の成功事例を学校の運営に生かしたいという考えがあったようだ。
こうしてMicrosoftと共に進められた学校建設プロジェクトにより、フィラデルフィア市は2005年「School of the Future」というコンセプトに基づいた公立高校を開校した。「School of the Future World Summit」の第1回が開催された年だ。
「新しい学校を作るにあたって、特に決まったプロセスは存在しなかった。しかし、実際このプロジェクトにかかわってプロセスが必要だと感じた」と話すのは、Microsoft 米国公共教育部門担当 ゼネラルマネージャーのAnthony Salcito氏だ。そのためMicrosoftでは、このプロジェクトを通じ、School of the Futureを構築するにあたって必要な「6i Development Process」をまとめた。
そのプロセスとは、第1段階が「Introspection」(内観)、第2段階が「Investigation」(調査)、第3段階が「Inclusion」(包括)、第4段階が「Innovation」(革新)、第5段階が「Implementation」(実装)、そして最後に再び「Introspection」を持ってくるというものだ。
「第1段階では、何をするためにどんなものが必要かを考え、指針を決める。その後調査を進め、どのようなモデルや成功事例があるかを探す。次の段階で、生徒や先生、親も含めたコミュニティ全体の意見を聞き、意志決定にもかかわってもらう。次にどのようなイノベーションができるかを考える。次の段階でようやくこれまで考えてきたことをつないで実装に結びつけ、最後にすべてを見直す段階に戻り、次の変革を考える」(Salcito氏)
この段階を踏むことで理想の学校作りは成功に近づくというが、「たいていの学校はいきなり第5段階の実装から入るケースが多い」とSalcito氏は指摘する。特に、地域社会の声を聞くことは同氏も重要視しており、「フィラデルフィアの学校建設時にも、同地域の生徒に未来の理想の学校像を聞いたところ、『安全な学校』という答えが返ってきた。その地域は犯罪の多い地域だったためだ」とSalcito氏は話す。