こうした住民の声を元に新設したフィラデルフィアの高校は、表面的には見えない場所に金属探知機を設置するなど、安全性に配慮した学校となった。また、電力や冷暖房には環境にやさしい仕組みを取り入れたほか、学校内の建築に使用した素材も緑が育ちやすいものを使用したという。
テクノロジ面では、同学校の教科書が紙を使わず電子教科書となっている点が特徴的だ。生徒がみなPCを使い、オンラインでコラボレーションする。また、授業はプロジェクトベースで行われ、数学や歴史といった個別教科の授業は存在しない。「例えば、科学分野である発見が起こった年には、このような歴史的事件が起こり、社会の環境はこうだった、というように、教科の枠を越えてすべてを関連づけて学べばより身につきやすい」とSalcito氏は述べる。
テクノロジは重要、しかしすべてではない
Microsoftでは、テクノロジが学校に変革を与えるという考えに基づき、教育分野での支援を続けているが、Salcito氏は「学校運営が成功するか失敗するかは、テクノロジの有無とは無関係だ」と言う。「テクノロジは確かに重要だ。しかし、単にテクノロジを学校に導入しただけでは外観を美しく見せただけに過ぎない。目的に合った使い方ができなければ意味がないのだ」(Salcito氏)
Salcito氏は言う。企業の場合でも、新たなテクノロジを導入したからといって企業の運営そのものが変わるわけではなく、最初はタイプライターをワープロに置き換える程度のものだと。本当にテクノロジが価値のあるものになるのは、テクノロジを通じて製品の製造や販売を効率的にしたり、テクノロジを使って調査した結果、よりよい製品開発に結びついた時なのだ。
学校教育にテクノロジを取り入れて成功につなげる--それは例えば「テクノロジを使うことで、生徒と先生がこれまでと違った関係を築けるようにすることや、よりパーソナライズされた新しい体験ができること、効率的な意志決定ができること、コラボレーションできることなどだ」とSalcito氏。テクノロジの重要さを強調しつつも、Salcito氏は「そのテクノロジをいかにうまく学びの環境に取り入れられるかが重要だ」と述べた。