米国政府のサイバーセキュリティ機関で責任者を務めた経歴を持つRod Beckstrom氏が、Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)の最高経営責任者(CEO)兼プレジデントに指名された。
Beckstrom氏の指名は、オーストラリアで現地時間6月26日に行われたICANNの年次会議で発表された。
グローバルな非営利団体であるICANNは、主にインターネットのドメイン名とIPアドレスの割り当てや管理などを行っている。
ICANNの会長であるPeter Dengate Thrush氏は、この決定を発表する中で、「Rod Beckstrom氏はまさに、ICANNが必要とする確固たる来歴と技術的素養を持ち合わせている」と述べた。
Beckstrom氏はスタンフォード大学でMBAを取得し、複数の非営利団体で役員を務めたほか、4冊の著書も執筆している。だが、同氏が広く認知されるようになったのは、米国立サイバーセキュリティセンター(NCSC)のディレクターを務めたときのことだった。Beckstrom氏は、軍部や情報部を含む各種政府機関で構成される大規模な機関である同センターの責任者として、政府通信ネットワークのセキュリティを監督した。
しかし、Beckstrom氏は2009年3月、米国家安全保障局(NSA)からの干渉を不服とし、NCSCのディレクター職を辞した。
Beckstrom氏は、米国土安全保障省(DHS)長官のJanet Napolitano氏に宛てた書簡の中で、NSAがNCSCにおける取り組みの大半を支配したと述べ、「NCSCをNSAに従属させることに賛成できない」と訴えた。Beckstrom氏はNCSCの実績を擁護したうえで、セキュリティが単独の組織に委ねられることがないよう、分権的な手法を取ることが望ましいと述べた。
ICANNによるBeckstrom氏の指名には、歓迎する声明が多方面から寄せられた。
「インターネットの父」と呼ばれるVint Cert氏は、声明の中で次のように述べた。「Rod Beckstrom氏には、ICANNのCEOという新たな役目を引き受ける準備が見事なほどに整っている。業界や政府における同氏の経験は、世界規模で非常にやりがいのあるこの仕事に役立つものだ」
電子プライバシー情報センター(EPIC)のエグゼクティブディレクター、Marc Rotenberg氏は声明の中で次のように述べた。「(Beckstrom氏は)ICANNを率いる役として素晴らしい選択だ。同氏は、人と組織と技術を理解し、ICANNの可能性と課題の両方を認識している。同氏はまた、勇気と先見の明をもってインターネットユーザーの市民的自由のために立ち上がった」
ICANNは長年、内部の問題、課金する手数料、理事から出された運営記録の開示請求に対する非協力的な態度など、数多くの理由によって批判されてきた。
ICANNは2008年、ドメインの接尾辞を「.com」「.net」「.org」など馴染みのあるもの以外に拡大する、インターネットの新たな命名規則を提案した。この案は、インターネット上での混乱につながるのではないかという大勢の懸念を招いた。
だが、Beckstrom氏が今回の指名に際して出したコメントは、ICANNへの信頼を反映している。
Beckstrom氏は記者会見で次のように述べた。「インターネットは、世界がコミュニケートし商取引を行う方法を変革してきた。そして少なからず、多数の利害関係者を持つボトムアップ型のこの組織は、インターネットの継続する進化の核であり続けてきたし、これからもそうあり続ける。ごく簡単に言えば、ICANNが有効であることの証明は、インターネットが機能していることによって示されている」
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。原文へ