クラウドコンピューティングを満足のいく形で定義するのが難しい理由の1つは、クラウドプラットフォームに対するニーズや期待が人によって様々に異なるということだ。クラウドの話を始めようとするときには(特に、競合するクラウドプラットフォームを比較してメリットを評価しようとする場合)、満たすべきニーズを最初に決めておかなくては、誤解と混乱を招くことになる。したがって、この記事でMicrosoftのWindows Azureプラットフォームと、SaaS戦略を進めている多くのISVの前に潜むさまざまな危険について分析する前に、クラウドコンピューティングを、重要だが、それぞれ異なるいくつかのカテゴリーに分類してみたい。
まず最初に、サービスとしてのクラウドについて話しているのか、インフラ資産としてのクラウドについて話しているのかを明確にする必要がある。私はよく、クラウドコンピューティングについての議論がかなり進んでしまってから、自分は当然のようにサービスとしてのクラウドコンピューティングについて話していたにも関わらず、相手は自前のクラウドインフラを実装するためのソフトウェアやハードウェアの購入について話していたことに気づくことがある。
これら2つの観点には、大きな認識の隔たりがある。私が見る所では、自前のクラウドコンピューティングプロジェクトに投資している企業の多くは、愚者のクラウドを作ろうとしている(訳注:著者は他の記事で、プライベートクラウドのことを愚者のクラウドと呼んでいる)。自らがクラウドプロバイダになろうというのでない限り、それは長期的にはいい資金の使途とは言えない可能性が高い。しかし、残念ながら私の見方は、現在主流となっている意見に比べると、少数派であるということは認めざるを得ない。多くの企業は、クラウドコンピューティングを活用するもっとも良い方法は、自分でそれを実装することだと確信している。これは、自動プロビジョニング機能を持つ仮想化されたデータセンタアーキテクチャへの移行は、新たなサーバのプロビジョニングを従来よりも素早く行う費用対効果の高い手段であるため、短期的な経費削減を達成しやすいからだ。米国国防総省が新たに始めた、Rapid Access Computing Environment(RACE)がその典型的な例だ。しかし、私がこの記事で議論したいのは、その種のクラウドコンピューティングではない。実際多くの意味で、私の定義ではそのやり方はクラウドコンピューティングとは言えない。なぜなら、それはパブリッククラウドとはつながらず、企業のファイアウォールの裏側にあるからだ。