わたしがどうしても気になるのは、この提携の発表時期--Microsoftのライバル、VMwareがメッセージングベンダーのZimbraをYahooから取得したと発表した翌日--だ。偶然同時に起こったと純粋に言い切れない気がするのだ。13日の電話会議中、HPとMicrosoftの2社は、この提携は2009年4月にさかのぼると強調していた。だが、元Microsoft幹部のPaul Maritz氏が率いるVMwareがエンドツーエンドのスタックを補完すべくZimbraを買収するといううわさは数週間前から出ていた。VMwareが、MicrosoftとHPの提携発表時期に多少(おそらくは、かなり)関与しているというのがわたしの予想だ。
MicrosoftウォッチャーでDirections on Microsoftのアナリスト、Paul DeGroot氏は、MicrosoftとHPの3年間にわたる2億5000万ドルの提携の背後にあるのはVMwareに違いないと述べている。
MicrosoftとHPの提携は「HPがVMwareと結んでいる関係となんら変わりはない」とDeGroot氏。「手がかりは、MSが“HPの優先的な仮想ソリューションプロバイダーの1社”であって、“優先的プロバイダー”ではないという部分だ」という。
DeGroot氏は、HPはすでにVMware製品がフルスタックで動くサーバを販売しており、すでにVMwareの管理製品「vCenter」を自社管理ツールの「Insight」と統合していることに触れる。
「Microsoftは仮想化戦略において、インフラの大部分を無料で提供し、管理製品で収益を得ようとしている。そのため、Microsoftにとって『System Center』を提携に入れることは重要となる」とDeGroot氏は付け加える。
HPのハードウェア、MicrosoftとHPのインフラソフトウェア、「SQL Server」「Exchange Server」上に構築したさまざまなMicrosoftとHPのアプリケーションをバンドルしたSmart Bundlesは、オンプレミスで動かしたい顧客(特に中小規模企業)とパートナー向けに提供される。クラウドで全部/一部を動かしたい顧客向けとして、MicrosoftとHPはこれらデータウェアハウス、ビジネスインテリジェンス、オンライントランザクション処理、メッセージアプリケーションが「Azure」クラウドでホスティングされるのかどうか、その時期がいつになるのかについて明らかにしていない。
「(最新のHPとの提携により)Microsoftは自社アプリケーションを統合できることになるが、これは流れを変えるほどのものではない」とDeGroot氏は見る。「同じアプリケーションがVMware上ですでに動いているし、VMwareはメモリオーバーコミットなどの技術を提供していることから、場合によっては(Microsoftの)『Hyper-V』で動かすよりも優れていることもある。そのため、まったく新しいビジネスではなく、ほとんどはHyper-VやSystem Centerを含まないHP/VMwareの提携でも可能だ」(DeGroot氏)。
DeGroot氏は、「結局のところ、HPとの提携はMSにとっては必要なステップだが、(Microsoftにとって)大きな増強になるとは思えない」とまとめる。「この提携の勝者はHPだ。HPは自社、VMware、あるいはMicrosoft(あるいはXen、KVM、VirtualBoxなど)にとって最善の取引が何であろうと、顧客の選択肢を広げることができる。さらに、MSの営業部隊と提携企業を取り込むことができるのだ」(DeGroot氏)。
驚くことでもないが、わたしが13日に話をしたMicrosoftとVMwareの代表者は、この提携におけるVMwareの要素を重要とはしなかった。Microsoftの幹部は、VMwareはMicrosoftとは違って、パブリッククラウドOS(あるいは、「Windows Server」のようなプライベートクラウドOS)を持たない、と述べた。
HPのインフラソフトウェア・ブレード担当マーケティング・ディレクターのJeff Carlat氏は、「これは仕返しのアプローチではない」と述べる。「Microsoftは仮想化と管理分野において技術を進化させている」とHPは感じており、「(Microsoftは)データセンターにおける事業を拡大している」ために提携に至ったと語った。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ