NECは3月19日、地方銀行向けに勘定系システムを共同利用できるサービスの販売を4月から始めることを明らかにした。クラウドの要素を取り入れてシステムを構築するという。
今回のサービスは、NECが運営するデータセンター内に勘定系専用のソフトウェアを搭載したサーバを設置する。ユーザーである地銀は専用線経由でシステムにアクセスする。預金残高や取引などを記録する顧客データベース(DB)機能も一括して提供するという。
今回のシステムは、同社が開発するオープン勘定系パッケージ「BankingWeb21」をベースにしている。日本初のオープン勘定系システムとされたBankingWeb21は、OSに「HP-UX」、DBに「Oracle Database」、分散トランザクション処理にBEA Systems(現在はOracle)の「BEA Tuxedo」を活用している。
大規模、高信頼性、高トラフィックの基幹系システムでの安定稼働を支える分散型ミドルウェア「OpenDiosa」を採用している。OpenDiosaは、住友銀行(現在は三井住友銀行)の勘定系システム構築プロジェクトで開発したミドルウェア「DIOSA/PX」がベースになっている。BankingWeb21の開発には二百数十億円かかったと見られている。
BankingWeb21は、1999年7月に発表され、2003年5月に八千代銀行で稼働を開始している。八千代銀行を含む9行がBankingWeb21を採用する予定だったが、開発が遅れたことで採用撤回が続いた。八千代銀行の稼働も当初は2001年を予定していた。三重銀行とびわこ銀行の2行は採用を撤回していないが、まだ稼働しておらず、現在稼働しているのは八千代銀行だけだ。
こうした事実があることから、2005年には「BankingWeb21の営業活動を凍結」という報道がされたこともある(NECは否定している)。その後ここ数年、BankingWeb21の動きはなりを潜めていただけに、今回のサービスは、BankingWeb21の復活と見ることができる。
現在100行以上の地銀が存在するが、その8割近くは勘定系をはじめとする基幹系システムを共同利用している。たとえばNTTデータが運営する「地銀共同センター」は京都銀行や千葉興業銀行など13行が共同で利用している。こうした地銀のシステムの共同利用は2000年代から始まっており、現在20近くの共同利用が存在する。
運営するのは、NTTデータや日本IBM、日立製作所、富士通、日本総合研究所などだ。実はNECのBankingWeb21もそうした共同利用の基盤となるものだったのだが、相次ぐ採用撤回で共同利用の市場に食い込めていなかったのである。今回のサービスは、そうした市場への再参入という見方もできる。