各地域におけるCEOの懸念としては、北米では「大きな政府および規制強化」、欧州では「人材不足」、中国では「グローバル思考」があがっているのに対して、日本では「新興国市場への経済力のシフト」が突出していることが浮き彫りになった。金巻氏はこれについて、「韓国の企業は自国のマーケットが小さく、新興国などに積極的な展開をしている。日本の企業は、全く違う発想を持つことができるのか、コアコンピタンスを生かすことができるのかといった懸念を持っている」とした。
一方で、「新たな経済環境は構造的に異なる」と回答したCEOは、日本が82%を占めるのに対して、北米では53%、欧州では47%、中国では55%となっている。「新興国市場への経済力のシフトが自社に影響を与える」としたCEOは、日本が74%であるのに対して、北米では49%、欧州が43%、中国では48%という結果が出ており、他国と20ポイント以上の差がついている。
また、「自社組織に最も必要な能力は実行スピード」としたCEOは、日本では44%だったのに対して、北米が34%、欧州が34%、中国では27%となっており、これについて金巻氏は「日本は品質を重視するという傾向が強いだけに、意外な結果となった。スピードで負けているという認識の裏返しかもしれない」とした。
IBMでは、今回の調査結果をもとに好業績企業が注力する領域を定義した。それぞれ「組織に創造性を発揮させるリーダーシップ」「巧みなオペレーションの追求」「顧客接点を新たな発想で作りかえる」という3点だ。
「経営者が強いリーダーシップを発揮したり、指揮者のような役割を備えるのではなく、いまや創造性を兼ね備え、さらに社員が創造性を発揮できる環境が求められている。また、複雑性を乗り越えながら、顧客に対してはシンプルに物事を提供するといった巧みな管理をすることが必要。さらに、“顧客のニーズは何か”ではなく、“顧客の側”で解決を図っていく、あるいはTwitterを利用して顧客との関係を構築するというように、顧客との関係を見直すといったことが好業績企業の条件となっている」(金巻氏)
