IDC Japanは6月15日、国内ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)市場について、2009年の実績と2010年〜2014年の市場予測を発表した。2009年は民間企業向けのHPC市場が景気後退の影響を受け大きく落ち込んだものの、学術用途で大型案件があり全体ではプラス成長を遂げた。
同社ではHPCシステムを価格帯別に分類。5000万円以上のシステムをテクニカルスーパーコンピューター、2500万円〜5000万円未満をテクニカルディビジョナルコンピューター、1000万円〜2500万円未満をテクニカルデパートメンタルコンピューター、1000万円未満をテクニカルワークグループコンピューターと分類している。
調査結果によると、2009年の国内HPC市場規模は、前年比6.9%増の410億9000万円となった。また、2014年の市場規模は354億7200万円、2009年〜2014年の年間平均成長率(CAGR)はマイナス3.0%になると予測している。
景気後退の影響を受け、2009年の国内サーバ市場全体が前年比19.2%の減少となる中で、同年の国内HPC市場はプラス成長をとげた。しかし、その内容としては、テクニカルスーパーコンピューターの分野のみが成長し、他のカテゴリはすべてマイナス成長だったという。前年に引き続き官公庁の研究機関、大学などの「学術系HPC」でテクニカルスーパーコンピューターの案件が多数あったことが要因だとIDCでは説明している。一方、民間企業向けの「産業系HPC」市場は、景気後退の影響を受け大きく落ち込んだ。
IDCでは、学術系HPCの出荷金額は国内HPC市場全体の75%程度を占めているとみている。また、2009年は海洋研究開発機構に出荷された「地球シミュレータ」の超大型案件が成長の原動力になった。2010年のHPC市場は、この反動によって前年比でマイナス成長になるとIDCは予測している。
また、製品分野別では、x86サーバによるクラスターシステムが市場を牽引するとIDCはみており、国内HPC市場の2009年〜2014年のCAGRはマイナス成長ながら、x86サーバの同期間のCAGRは4.6%になると予測。RISCサーバやスーパーコンピューターは、一部のアプリケーションの利用に限定されるとみている。
IDC Japanでサーバー リサーチのマネージャーを務める林一彦氏は、「HPC市場は、大容量共有メモリを必要とするアプリケーションで、RISCサーバとスーパーコンピューターの根強い需要がある。一方、価格対性能比の優れたx86サーバを用いたクラスターシステムは、今後さらに増加するだろう」とコメントしている。