IDC Japanは6月28日、国内IT市場における産業分野別および企業規模別の2009年下半期の実績の分析と2010年〜2014年の市場規模予測を発表した。IDCでは、日本経済は徐々に明るい兆しが見えているが、先行き不透明なことから多くの企業で今後もIT投資を抑制すると予測。一方、国内経済は「インテリジェント社会」を目指す動きが活発化し、ICTはさらに高度なエコシステム構築が求められると分析している。
2010年IT投資額の前年比成長率は、景気低迷の影響を受けて、999人以下の中堅中小企業(SMB)でマイナス3.5%と、2月に実施された前回調査と比較してさらに下方修正となった。1000人以上の大企業もマイナス1.7%になるとIDCは予測している。
2010年IT投資額の企業規模別では、1〜99人の小規模企業は1兆693億円(前年比成長率マイナス3.8%)、100〜499人の中小企業は1兆4105億円(同マイナス3.4%)、500〜999人の中堅企業は7676億円(同マイナス3.0%)、1000人以上の大企業は5兆9482億円(同マイナス1.7%)とIDCでは予測している。
経営体力が弱いSMBでは、業績が徐々に回復傾向にある企業もある一方で、低迷する企業も多く、IT投資の抑制傾向が続いている。そのため、2010年のSMBのIT投資も引き続きマイナス成長になるとIDCではみている。ただし、2009年と比較すると、マイナス幅は小幅になると分析。大企業においては、同様にIT投資に抑制傾向が継続することから2010年もマイナス成長となるが、金融、サービス分野を中心に2010年後半からシステム刷新、新規開発が再開されるとIDCはみている。
一方、国内経済は回復しても以前のような高い成長率は見込めないが、今後社会のさまざまなレベルで「インテリジェント社会」を目指す動きが活発になるとIDCではみている。インテリジェント社会の典型的な例である「スマートシティ」は、電力会社、建設会社、電池メーカー、自動車メーカー、コンビニエンスストアなど、幅広い業種の企業や自治体などのプレイヤーが参加することで活性化する。このインテリジェント社会では、ICTに求められる役割が高度化し、他の業種とのより深い連携が必須になるとIDCは説明している。
IDC Japan ITスペンディング シニアマーケットアナリストの福田馨氏は「ITベンダーは、これまでもエコシステムの構築に努力してきているが、インテリジェント社会に向け、従来に増してICTの枠を超えた幅広い業種を巻き込んだ『新たなエコシステム』の構築を主導することが必須となる」と分析している。